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「イスラム国」増殖防止で安保理決議 外国人戦闘員への処罰義務付け
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国連安全保障理事会首脳級特別会合でデービッド・キャメロン英首相(左)の発言を見守るバラク・オバマ米大統領(右)と国連の潘基文事務総長(中央)=2014年9月24日、米ニューヨーク(AP) 国連安全保障理事会は24日、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」などに参加する外国人戦闘員への処罰を加盟国に義務付ける決議案を全会一致で採択した。会合を主宰したバラク・オバマ米大統領(53)は外国人戦闘員が「紛争を悪化させている」と強調した上で、「歴史的」な決議だと強調した。
米国のまとめた決議案には、100カ国以上が共同提案国に名を連ねた。「外国人戦闘員が(中東地域の)紛争を悪化、長期化させるとともに、(戦闘員の)出身国の脅威にもなりかねない」と指摘。違反国には国連憲章7章による強制措置も視野に加盟国に対し、テロ目的の海外渡航や資金調達などを国内法で処罰することを義務化した。
オバマ大統領は会合で、イスラム国にこれまで少なくとも80カ国から1万5000人以上が合流したと指摘。「(決議履行という)具体的な行動が必要だ」と各国に訴えた。
ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相(64)は決議に賛成したが、「シリアのアサド政権と対立する過激派への支援」などが外国人戦闘員問題を「悪化させた」と発言。中国の王毅(おう・き)外相(60)も、安保理決議を経ずにシリア空爆を開始した米国を間接的に批判した。
一方、訪米中のデービッド・キャメロン英首相(47)は24日、イスラム国に対するイラクでの空爆参加の承認を求めるため、26日に議会を緊急招集することを表明。国連総会で「悪を打倒するため世界は団結しなければならない。英国は一翼を担う」と強調した。連立政権を組む自由民主党に加えて最大野党の労働党も支持を示しており、承認される見通し。
オランダとベルギーも24日、イラク領内でのイスラム国空爆に参加するため、それぞれF16戦闘機6機を派遣する方針を決めた。(ニューヨーク 黒沢潤、ロンドン 内藤泰朗、ベルリン 宮下日出男/SANKEI EXPRESS)
≪米大統領、包囲網構築を完了 「死のネットワーク」壊滅訴え≫
国連本部では24日、シリア領内で続く「イスラム国」への波状的な大規模空爆と同時進行する形で、安全保障理事会の首脳級会合が開かれた。オバマ米大統領にとり、自ら議長役を務めた首脳級会合は対イスラム国の主要な外交舞台であり、国際包囲網構築の外交作業はひとまず完了した。
「決議だけでは十分ではない。紙の上の約束、修辞や決意ではテロリストの攻撃を止められない。言行一致でなければならない」
会合でオバマ氏は、円卓に並ぶ各国の首脳らを見渡しながら念を押した。採択された対テロ決議には拘束力があるが、この種の決議は、各国の履行状況に濃淡が生じるのが常だからだ。
シリア領内の空爆により今後、外国の戦闘員がテロの最前線にいっそう集結することが予想される。このため決議は、外国戦闘員の出と入りを阻止し、イスラム国などテロ組織の増殖を抑えるとともに、戦闘員が母国でテロに及ぶ事態を防ごうとするものだ。米国が主導する包括戦略の一環にほかならず、イスラム国壊滅への重要な要素である。
これに先立つ一般討論演説で、オバマ氏はイスラム国などを「死のネットワーク」と形容し、「米国は幅広い有志連合とともに壊滅に取り組む。有志連合への参加を世界に求める」と呼びかけ、国際社会が結束する機運をさらに高めた。
米軍は中東5カ国と多国籍軍を組織し、オバマ氏の国連総会出席に合わせシリア領内への空爆を開始した。この事実は(1)空爆を既成事実化し米国の決意を加盟国に示す(2)それによって米国の指導力を誇示し、加盟国の有志連合へのさらなる参加を促す(3)空爆に異論を唱えるロシアなどの孤立化を図る-といった形で国連外交に反映された。
その効果は、国連総会に出席中のキャメロン英首相が24日、イラクでの空爆に参加するため議会を緊急招集する意向を明らかにしたことや、ベルギーとオランダも参加する方針を決めたこととなって表れた。
ロシアなどが問題視している国連決議なしの空爆については、国連憲章51条に基づき「個別・集団的自衛権の行使」であり正当だ、との主張を国連側に伝達することで対抗した。
こうした取り組みは評価すべきだ。今後の課題は、シリア領内における地上での支援なしにイスラム国の壊滅を図れるか、などに移る。(ニューヨーク 青木伸行/SANKEI EXPRESS)