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ともに生きる「花と人」 チームラボ、国東半島芸術祭に最新作

 別府湾、伊予灘、周防灘(すおうなだ)に囲まれ、中央には火山群がそびえ立つ。放射状に伸びた谷が分断する6つの集落に分かれ、独自の文化が育まれてきた大分県の国東(くにさき)半島で、若者から支持を集める「チームラボ」(猪子(いのこ)寿之代表)の最新作「花と人、コントロールできないけれども、共に生きる- kunisaki peninsula」が公開されている。半島に咲く花々をモチーフにした体験参加型のインスタレーション作品だ。

 「花と人-」は、今年初開催の「国東半島芸術祭」の出品作の一つ。芸術祭では半島北部に6つの展示エリアが設けられ、夕日の名所として知られる豊後高田市(ぶんごたかだし)の真玉海岸近くにあった旧縫製工場内にチームラボによる幻想的な空間が生み出された。

 全長54メートルの暗闇に入った鑑賞者は、合わせ鏡になった通路を抜けて広間へと進む。そこではプロジェクターで壁面に投影された花々が宙を舞い、四方八方を埋め尽くす。一面に広がる花は、鑑賞者が一定の距離を保つことで増えていき、ある距離に入ると散っていく。約1時間で春夏秋冬が移り、約30~40種類の花が、さまざまに展開する。

 国東半島の印象について猪子代表は「花の多さに驚いた」としたうえで、「人と自然との境界線があいまいで、人が手をかけ続けることで生態系が存在する、数少ない里山の一つ」と指摘した。「人と自然の距離感がとにかく気持ちよかった」とも。

 会場となった豊後高田市では2006年から耕作放棄地対策の一環として「花いっぱい運動」が始まり、菜の花、コスモス、ヒマワリなどが住民の手で植えられてきた。そして、花粉が飛ぶことで、人の手が入らない山にも花々が自生し、題名のように「コントロールできないけれども、共に生きてきた」わけだ。

 内覧会では永松博文(ひろふみ)市長が「とてもうれしい」と声を上げ、猪子代表と寄り添ってプロジェクターが投影する映像に入り込んで喜びを表現した。国東に住む人々の日常である「花いっぱい」が具現化した空間に、感極まったようだ。

 「秘境」の歴史・文化と出合う

 奥へ、奥へ。芸術祭では、山奥へつながる岩壁、花畑の中などに作品が置かれている。総合ディレクターを務める山出淳也氏は「アーティストが国東半島の歴史や文化と出合い、真正面から向き合うことで、ここでしか体験できない作品を生み出す」「訪れた人には自然を体感する装置になる」などと狙いを説明する。

 高台の木立ちで見た川俣正氏の「説教壇」は、キリシタンの歴史を今に伝える遺構のようだ。つえをつき、どれくらい登っただろうか。瀬戸内海の大パノラマを一望する不動尊のそばに巨匠アントニー・ゴームリー氏の人体像がポツンと立っていた。修行僧が訪れるような場所で地元の人でも知らなかった絶景スポットという。芸術祭は国東半島の魅力を再発見する機会となっている。(産経デジタル 日下紗代子/SANKEI EXPRESS

 【ガイド】

 国東半島芸術祭は11月30日まで。水曜日定休。大分県豊後高田市、国東市の各所で開催。チームラボのほか宮島達男、川俣正、オノ・ヨーコら著名アーティストが参加している。鑑賞無料(一部有料)。「歩いて旅する芸術祭」として、アーティストや地元ガイドの説明を受けながら作品を鑑賞するバスツアーや山歩きコースなどがある。公式ホームページのURLは、http://kunisaki.asia/

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