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【拉致再調査】拉致被害者家族「怒りをぶつけて」 政府調査団 あす平壌入り

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【拉致再調査】拉致被害者家族「怒りをぶつけて」 政府調査団 あす平壌入り

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政府与野党拉致問題対策機関連絡協議会に臨む安倍晋三(しんぞう)首相(右)と、山谷えり子拉致問題相。被害者家族の思いは伝わっているのか=2014年4月20日、首相官邸(酒巻俊介撮影)  北朝鮮による拉致被害者らの再調査の現状確認のため、政府の調査団が27日、平壌入りする。現時点での訪朝に反対してきた被害者家族は複雑な思いで見つめる。長年北朝鮮と対峙(たいじ)し、裏切られ続けた経験から、北朝鮮からの誘いによる訪朝を「危険」と感じているからだ。ときに政府に思いが届かないことにもどかしさを感じながら、わずかな希望を胸に結果を待つ。

 北の狡猾さ危惧

 「長い間、北朝鮮にだまされ、失敗した経験がある」。被害者の家族会が、調査結果の報告を受けられる時期まで訪朝を待つよう政府に申し入れた背景について、田口八重子さん(59)=拉致当時(22)=の兄で家族会代表の飯塚繁雄さん(76)はそう説明する。

 2002年9月の日朝首脳会談では被害者5人の生存が分かり、04年5月の2回目の首脳会談では被害者の子供計5人が帰国を果たした。だが成果の一方で、日本はだまされ続けてきた。

 02年の会談では、田口さんや横田めぐみさん(50)=拉致当時(13)=ら被害者8人を何の根拠もなく、「死亡」と説明。04年の会談でも再調査に応じながら、その後出してきたのは矛盾だらけの説明とめぐみさんの偽遺骨だった。

 拉致問題をめぐり、北朝鮮がこれまで誠実に対応したことは一度もない。その狡猾(こうかつ)さを家族は身をもって味わってきただけに、北朝鮮が呼びかけた形での訪朝には、危険を感じた。

 被害者の一日も早い救出を家族は誰よりも願っている。その思いを押し殺し、確実な成果を得るため、政府に「焦らないで」と訴え続けてきた。飯塚さんは「早く何とかしなければいけないという気持ちだけで、北朝鮮の言いなりになってはいけない。日本が焦って譲歩することが北朝鮮の狙いだ」と話す。

 「首相の決断なら」

 今も訪朝に慎重論を抱えながらも、家族が最終的に受け入れたのは、安倍晋三首相(60)の存在ゆえだ。衆院議員になる前から変わらず拉致問題に取り組んできた。「私たちが言うまでもなく、家族の気持ちを知っている。首相がこれまでの経験をもとに家族や被害者を思い浮かべて決断したのであれば任せるしかない」

 それでも政府の担当者に家族の思いは伝わっているのだろうかという不安が残る。1978年に拉致された田口さんは北朝鮮で大韓航空機爆破事件(87年)の実行犯、金賢姫(キム・キョンヒ)元工作員(52)に日本語などを教えていたが、金元工作員の証言で事実が分かったのは91年。それ以来、20年以上にわたって飯塚さんは北朝鮮と対峙することを余儀なくされている。

 ほかの家族も事情は同じだ。だが政府の担当者は次々に替わる。政府に頼らざるを得ない立場を理解しているからこそ、家族の思いが十分に理解されないことにもどかしさを覚える。

 あるときには、担当交代で訪れた政府関係者に「家族は、代わることができないんです」とこぼすこともあった。飯塚さんは「戦って、待ち続けても結果が出ない。そのたびに味わった苦しい思いは家族にしか分からない」と感じることもあるという。

 訪朝を前に、飯塚さんは訪朝団に思いを託す。「どうすれば被害者を取り返せるかを頭に置いて、北朝鮮に日本の怒り、家族の思いをぶつけてほしい」(SANKEI EXPRESS

 ■5月の日朝合意 日朝両政府が5月下旬のスウェーデン・ストックホルムでの外務省局長級協議を踏まえて文書化した合意。29日に発表した。国交正常化を目指し、両国が7項目ずつの行動を約束した。北朝鮮は拉致被害者、行方不明者、残留日本人と日本人妻、日本人の遺骨について同時並行で調査すると明記。日本は独自に科す経済制裁の一部を解除するとした。北朝鮮は合意に基づき7月4日、特別調査委員会を設置。日本は人的往来や送金報告義務に関する制裁を解除した。

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