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不器用で寡黙な「男」貫く 高倉健さん死去 83歳

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不器用で寡黙な「男」貫く 高倉健さん死去 83歳

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映画「鉄道員(ぽっぽや)」(1999年)の製作発表会に出席した高倉健さん(右)と広末涼子さん=1998年12月18日(産経新聞撮影)  日本映画界を代表するスター俳優、高倉健(たかくら・けん、本名・小田剛一=おだ・ごういち)さんが10日、悪性リンパ腫のため、東京都内の病院で死去した。83歳だった。東映の任侠映画シリーズで一時代を築き、「幸福の黄色いハンカチ」や「南極物語」「鉄道員(ぽっぽや)」などの名作に主演し、一貫して寡黙で不器用な男を演じ続けた。最後の作品となった2012年の「あなたへ」でも主演を務め、生涯に205本の映画に出演した。

 福岡県出身。葬儀は近親者で行った。所属する「高倉プロモーション」によると、次回作の準備中に体調不良で入院、治療を続けていたが、容体が急変したという。事務所は「生ききった安らかな笑顔でございました。今は、お一人おひとりの心の中に宿る故人の笑顔に、静かに祈りをささげていただけますことを願っております」とのコメントを発表した。

 「網走」「鉄道員」

 高倉さんは、明治大商学部卒業後、1955年に東映にニューフェースとして入社。60年代半ばから、任侠道に生きる男を描いた「日本侠客伝」や「昭和残侠伝」シリーズなどの主演作で人気を集め、「網走番外地」シリーズも大ヒットした。「死んでもらいます」の決めぜりふは、全共闘世代の共感を集め、時代のヒーローとなった。

 東映独立後、77年に「八甲田山」と「幸福の黄色いハンカチ」で第1回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。83年に主演した「南極物語」は日本映画史上空前の大ヒットを記録した。99年の「鉄道員」で、モントリオール世界映画祭で主演男優賞を受賞したほか、米ハリウッドの「ブラック・レイン」など海外作品にも出演した。59年に歌手の江利チエミさん(82年死去)と結婚したが、71年に離婚。2013年に文化勲章を授与された。

 撮影楽しみだったが

 「器用なたちではないですから」という自らを評した言葉通り、余計なことは語らない、ある意味で日本人が昔から理想としてきたストイックな男をスクリーン内外で貫き通した。

 そんな健さんに魅せられた映画関係者は、その死を悼んだ。「幸福の黄色いハンカチ」の山田洋次監督は「同い年の健さんが元気でいてくれることは、僕にとってどれだけ励みであったか」と肩を落とし、共演した武田鉄矢さんも「僕みたいなやつに演じることの純真さを教えてくださった。生涯の宝だと思う」と話し目頭を押さえた。

 「鉄道員」で娘役を演じた広末涼子さんは「今はまだ信じられません。ただただ悲しくて、寂しいです」とコメント。「背筋の伸びた大きな体で、力強く抱きしめてもらった思い出…全部忘れません」と、思いをはせた。妻役の大竹しのぶさんは「映画人『高倉健』の魅力は、そのまま、人間『高倉健さん』の魅力。神様みたいな人が本当の神様になってしまった」としのんだ。

 鉄道員のほか、最後の作品「あなたへ」など、数多くの主演作でメガホンを取った降旗康男監督は「残念の一言です。来春の撮影を楽しみにしていましたが、できなくなってしまいました」と悔しさをにじませた。(SANKEI EXPRESS

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