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大統領守れぬ「お粗末」警護隊 米ホワイトハウス侵入 内部調査結果が判明
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バラク・オバマ米大統領を取り囲むようにガードするシークレットサービスの要員たち。9月のホワイトハウス侵入事件では、信じられないような失態を重ねていた=2014年10月20日、米イリノイ州シカゴ(ロイター) 無線用のイヤホンを外し、私的な電話にふける。大事なドアの鍵をかけ忘れる。警棒と間違えて懐中電灯を取り出す-。映画館でこんな刑事ドラマを上映すればさぞや人気のコメディーとなっていたことだろう。だが、これは喜劇映画の一場面ではない。9月に米ホワイトハウスに男が侵入した事件を受けて米国土安全保障省が行った内部調査で判明した、「守れない」米大統領警護隊(シークレットサービス)の、事件当日の行動の一部始終なのだ。
米紙ニューヨーク・タイムズがスクープし、24日までに欧米メディアが報じた。調査は警護上の問題点をあぶり出し、再発防止につなげる目的で行われたもので、報告書は複数の失態が重なってホワイトハウス内部への侵入を許す結果になったと分析。運用面や組織上の問題のみならず、警護官個々の技術的な問題が原因だと結論づけた。
事件は9月19日夜、イラク駐留米軍への従軍歴がある42歳の元陸軍兵士、オマール・ゴンザレス容疑者がナイフを所持した状態でフェンスを乗り越えてホワイトハウスに侵入し、逮捕されたというもの。バラク・オバマ大統領(53)は不在だったが、ゴンザレス容疑者は大統領一家の居住区に続く階段そばの「イーストルーム」に到達、全米を震撼(しんかん)させた。
内部調査の報告書によると、確かに不運はあった。
ゴンザレス容疑者がよじ登ったフェンスはたまたま侵入者を防ぐための“忍び返し”がなく、大勢の隊員がいたペンシルベニア通りに面したゲートからは工事現場が遮蔽物となって容疑者を視界に収めることが困難だった。
ただ周辺の道路を巡回していた別のチームがフェンスを登るゴンザレス容疑者を発見。しかし、武装していないと考えたため、制止を呼びかけただけで発砲しなかった。「北庭」への侵入を許した後も、2人の隊員はゴンザレス容疑者が敷地内の茂みを突破できないと考え、途中で追跡をやめていた。北庭には警備犬を連れた隊員が1人常駐していたが、私的な電話の最中で、耳につけているはずの無線用イヤホンを外していた。
こうなると、警護システム上の問題を通り越して、もはや「人災」。ホワイトハウスの正面玄関の外側付近で容疑者と遭遇した隊員は、玄関の扉は施錠されていると予測して犯人を追わなかったが、実際には鍵はかけられていなかった。玄関からホワイトハウス内部に侵入したゴンザレス容疑者を見ても、複数の隊員が建物内部のレイアウトをよく知らなかったため、追うのを諦めていた。
扉の内側でゴンザレス容疑者に突き飛ばされた女性隊員はとっさに金属製の警棒をベルトから外そうとして懐中電灯を手に握っていた。結局、ゴンザレス容疑者を取り押さえたのは勤務時間を終えて、たまたまその場を通りかかった隊員。大統領一家は確かに不在だったが、約10分前にヘリで飛び立ったばかりだった。
報告書は事前調査の不備も指摘している。警察は6月に首都ワシントンに隣接するバージニア州でゴンザレス容疑者の車を止め、車内にライフル2丁、拳銃4丁、弾薬などとともにホワイトハウスの位置に印を付けた地図があるのを見つけている。全ての不審者をマークすることは不可能だが、事件の数日前にはオバマ大統領が視察先で、犯罪歴があり銃を所持していた民間警備員と同じエレベーターに乗り合わせるという警護上のミスがあったばかりだった。
全米を震撼させた事件の、さらに驚愕(きょうがく)させられる調査報告書の中身。最も驚いたのは、そうとは知らず連邦予算の強制削減などで関連予算を削ってしまった大統領本人であろうことは疑う余地がない。(SANKEI EXPRESS)