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慎重に丁寧にロスに運びたかった 平松昭子

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慎重に丁寧にロスに運びたかった 平松昭子

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猪口とは、小さな器のこと。この器の名前は「ホワイトチョコ」といいます(平松昭子さん提供)。http://kimonosnack.blogspot.com  【和のスタイル】

 先週、ロサンゼルスに行ったときに、お互いのブログを通して知り合った私と同じ名前で同じ仕事のアキコさんとランチの約束をしました。その日はアキコさんの誕生日。手土産をスペシャルなものにしたくていろいろ考えた結果、日本の作家さんの器にすることにしました。海外からも通販で手に入れることはできるものですが、飛行機の中で大事に抱えて届けたいと思いました。ネットで探してみるとアキコさんがお好きそうな上品で真っ白な器が見つかりました。白磁に金の縁取りが施されたその器を作った方は青木良太さんといい、1978年生まれの若手の作家さん。さっそくアキコさん夫婦に2つ注文しました。

 数日で器が届きました。段ボールを開けると繭(まゆ)のような梱包(こんぽう)材がぎっしりつまって、繊細な器が2つ並んでいました。それらを丁寧にもとに戻し梱包し直して、飛行機の機内に持ち込むバッグに入れました。すると、バッグの中は器の箱でいっぱいになってしまい、あとは大きくて重い一眼レフカメラしか入りません。

 成田のシンガポール航空の搭乗口は45番ゲートでした。手荷物チェックを済ませ、搭乗口に向かう途中で私の名前ともう一人の方の名前が、「急いでください」と放送されました。前方を見ると、まだ10番ゲートです。私は、軽くて繊細な器と重くて精密なカメラの入ったバッグを脇に抱えて走りました。すれ違う人にぶつかりながら動く歩道を走っても走っても、やっと20番ゲート。また私の名前が呼ばれました。もう一人の方は到着したのか私の名前だけでした。どうしましょう、間に合わないかもしれないとくじけそうになりましたが、学生時代に陸上部だったことを思い出し最後の力を振り絞りました。やっと、45という数字が見え、ラストスパートをかけて滑り込みセーフ! 息をきらしながら席に着くと、CAさんが私の手荷物を上の棚にポーンと放り込みました。大事に抱えてきたバッグが…。はらはらドキドキしながら海を渡った器ですが、無事にアキコさんにお渡しすることができましたよ。(イラストレーター 平松昭子/SANKEI EXPRESS

 ■ひらまつ・あきこ 1970年、愛知県生まれ。広告プロダクション退社後、フリーのイラストレーターに。ファニーでエレガントなイラストで人気を集め、現在は「GLOW」でコミックエッセーを連載中。「kate spade new york」日本公式ブロガー。水墨画や日舞をたしなみ、着物を愛好する。著書に「お洒落きものイズム」(グラフィック社)など。LINEのスタンプ「ラヴ&ゴージャス」が発売中。kimonosnack.blogspot.com

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