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政治
【取材最前線】新聞社「選挙班」の名鑑作り
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公示前の選挙ポスター掲示場=11月30日(蔵賢斗撮影) 安倍晋三首相(60)の経済政策「アベノミクス」の是非を争点にした第47回衆院選が2日公示され、各党の舌戦は本番に入った。
報道各社も、各選挙区の情勢や各党党首の動向をつぶさに追う「取材合戦」に熱が入る。同時に、立候補者の名鑑の作成や当落を予想、判定する組織(産経新聞社は「選挙班」と呼んでいる)が活動する。
名鑑は、候補者の氏名や年齢、肩書、学歴や経歴、それに顔写真を載せた資料である。候補者紹介でしかないが、有権者が誰に投票するかを判断する有力な材料になる。些細(ささい)なミスがあっても、候補者にとっては当落に影響しかねない場合があり、選挙班にとって名鑑作りは最も神経を要する作業になる。
名鑑作りは、立候補が予定されるすべての人の情報収集から始まる。集まると、選挙用に構築したシステムに入力する。ここが最大の難関といえる。例えば、姓の「サカモト」は「阪本」「坂本」「坂元」などいくつかあり、変換ミスをやりかねない。「東」のふりがなは「あずま」も「あづま」もある。何度も読み合わせを行い、ミスを防ぐ。
「表記の統一」も重要な留意点の一つだ。ある候補者には「松下電器社員」としながら、別の候補者に「電器メーカー社員」と表記すれば、公平性を欠いてしまう。「会社経営」「会社社長」「会社役員」なども読み手に与える印象は微妙に異なるからだ。
プロフィルを整えた後は、公示日の動きに合わせて立候補者を届け出順に並べるなどの紙面作りのリハーサルを何度か行う。今回の衆院選は、突然の衆院解散だったこともあり、公示までの事前準備の期間が極めて短かった。リハーサルは実質2回しかできず、11月末の最後のリハーサルでは、印刷に出す直前の紙面を確認するための「ゲラ刷り」と呼ばれる段階で、半分以上の候補者の選挙区が正しく表示されない「トラブル」が起きた。原因を探ると端末の操作ミスと判明したが、もしシステムの故障であればこれまでの作業が台無しになりかねないため、選挙班員はみな冷や汗をかいた。
公示日はミスなしで乗り切った。選挙班は14日の投開票日に向けた作業に没頭している。(政治部 力武崇樹/SANKEI EXPRESS)