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科学
STAP細胞存在否定 検証打ち切り 理研発表 小保方氏退職へ
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STAP細胞の検証結果についての記者会見に臨む理化学研究所の相沢慎一特任顧問(左から2人目)ら=2014年12月19日午前、東京都港区(共同) STAP細胞の有無を調べてきた理化学研究所は19日、小保方晴子(おぼかた・はるこ)研究員(31)が検証実験でSTAP細胞を作れず、論文の内容を再現できなかったと発表した。細胞の存在を事実上、否定する結果となり、理研は来春まで続ける予定だった検証実験を打ち切った。小保方氏は12月21日付の退職願を提出し、受理された。
会見した実験総括責任者の相沢慎一特任顧問は「論文の手法で作製できるSTAP細胞はなかった。これ以上の検討は検証実験の範疇(はんちゅう)を超える」と述べた。
小保方氏は「このような結果にとどまってしまったことに大変困惑している」とのコメントを出した。
理研はSTAP細胞の有無に決着をつけるため、小保方氏自身による検証実験を7月に許可。小保方氏は9月中旬から2カ月半、論文(撤回済み)と同じ手法で作製に取り組み、期限の11月末に終了した。
実験では万能性の目安となる遺伝子が働くと、細胞が緑色に光るように遺伝子操作したマウスを使用。白血球の一種であるリンパ球を採取し、弱酸性の溶液に浸してSTAP細胞の作製を試みた。
計48回の実験を行った結果、緑色に光った細胞もわずかにあったが、いずれも明確な万能性遺伝子の働きは確認できず、STAP細胞は作れなかった。
作製した細胞を別のマウスの受精卵に注入し、胎児の全身の細胞に分化する万能細胞の特徴を示すか調べた。1615個の受精卵に細胞を入れたが、いずれも万能性は確認できなかった。
小保方氏が参加しない理研の検証チームも成功しておらず、来年3月までの期限を待たずに実験を終了した。国際出願したSTAP細胞の特許は放棄することも含め検討する。
1月に発表されたSTAP細胞論文は多くの誤りが判明し、理研は小保方氏による画像データの捏造(ねつぞう)や改竄(かいざん)の不正があったと認定。来年1月にも論文の追加調査の結果をまとめ、小保方氏に対する懲戒処分の審査を再開するが、退職後となるため、相当する処分内容を示すだけとなる。
≪信頼回復 真相究明が不可欠≫
小保方晴子(おぼかた・はるこ)氏が自ら作製できなかったことで、STAP細胞は存在しない可能性が極めて高くなった。世界が注目した論文発表から約11カ月。混迷が続いたSTAP細胞は「存在する証拠はない」との判断で事実上、決着する見通しだ。
STAP細胞は新型万能細胞として脚光を浴びたが、発表直後から多くの疑惑が浮上。論文は既に撤回され、科学的な根拠は失われている。しかし小保方氏は4月の会見で「STAP細胞はあります」と強調し、その後も細胞の存在を主張してきた。
他の研究者から作製できたとの報告はなく、その存在は疑問視されてきたが、存在しないことを科学的に証明するのは難しい。理研が当初認めなかった小保方氏の検証実験を許可したのは、「本人が作製できなかったら、できないという結論になる」(竹市雅俊・前研究センター長)との見通しがあったからだ。
検証実験の打ち切りは当然だ。ただ、これで問題が解決したわけではない。STAP細胞が存在しないのなら、なぜ万能細胞の証拠となる写真などを論文に記載できたのか。細胞の正体は胚性幹細胞(ES細胞)との疑いが強まっており、真相究明が不可欠だ。
小保方氏は今回の会見に姿を見せなかった。理研は本人の体調を考慮したとしているが、これまでの主張を否定する重大な結果が出たのだから、小保方氏はその理由を自らの言葉できちんと説明すべきだった。つらい立場だが、それが科学者としての責任だろう。
日本を代表する研究機関の理研で起きたSTAP問題は、科学への信頼を大きく揺るがした。細胞の存在を実証できなかったことで多くの人が落胆し、不信を強めたに違いない。科学史に残る汚点といえる。
日本の科学研究は近年、降圧剤の臨床研究のデータ操作問題や研究費の不正請求など問題が相次いでいる。国は研究不正の防止に関する新たな指針を来年度から運用する計画だが、実効性は未知数だ。
STAP問題の背景には小保方氏の未熟さだけでなく、指導的な立場だった共同研究者による検証が不十分だったことなど、多くの複合的な要因が潜んでいた。理研は検証実験の打ち切りで幕を下ろすのではなく、今後の追加調査の結果も踏まえ、科学界の手本となる再発防止策を打ち出し、信頼回復に全力を挙げなくてはならない。(長内洋介/SANKEI EXPRESS)