SankeiBiz for mobile

「おいしいカレーうどん」でこんなに幸せ 平松昭子

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSのトレンド

「おいしいカレーうどん」でこんなに幸せ 平松昭子

更新

「おいしいカレーうどん」でこんなに幸せ(イラスト:平松昭子さん提供)。http://kimonosnack.blogspot.com  【和のスタイル】

 先日、撮影の途中に井の頭公園の中の茶屋のようなお店にアシスタントさんたちと初めて入りました。『おいしいカレーうどん』というメニューが壁に大きく貼ってあったので、みんなでカレーうどんを注文しました。店内の真ん中には大きな円柱のストーブがあり、時代劇に出てきそうな無愛想で怖そうなおかみさんがその横に座っていて、業者さんに発注した物が違うと怒っている様子が見えました。何か嫌な感じがしました。これでカレーうどんがおいしくなかったらみんなのモチベーションが下がってしまいます。しかし、そんなに待たずに出てきたカレーうどんはカツオ出汁(だし)がしっかり効いて熱々で、ふーふーいいながらあっという間に食べてしまいました。カレーうどんでこんなに幸せになれるなんて!

 次の撮影用のための着替えを確認したら、パンツを忘れてきてしまったことに気付きました。2人のアシスタントさんたちのパンツを見ると、1人が予定していた黒のスキニーを履いていたので、「A子ちゃん、ちょっとそのパンツ貸してよ、私のタイトスカート貸すから」と交渉しました。お店のトイレを借りようとしましたら、店員さんに「故障中なんです」と断られ、少しムッとしてA子ちゃんと顔を見合わせました。公園のトイレが2分くらいの所にあると教えていただき、私たちは寒い中を走ってトイレに行きました。そのトイレは、とても汚くて臭くて倒れそうでした。パンツとスカートを交換し、また走ってお店に戻ると大きなストーブの横に座ったままのおかみさんが初めて別人のような笑顔でこちらを見ていました。私たちも思わず笑顔になりました。お会計をすませると、スカートで足が寒そうなA子ちゃんがかわいそうで、毛皮のロングコートを強引に貸してあげました。それを見ていたおかみさんがますますうれしそうに笑っていて、私たちもつられて楽しい気分になりました。

 後でこのお店「井泉亭」を調べてみたら、なんと幕末の頃からあるお店なんですって。名物といわれている「田舎しるこ」も来年一番に食べに行きたくなりました。それではみなさま、よいお年を。(イラストレーター 平松昭子/SANKEI EXPRESS

 ■ひらまつ・あきこ 1970年、愛知県生まれ。広告プロダクション退社後、フリーのイラストレーターに。ファニーでエレガントなイラストで人気を集め、現在は「GLOW」でコミックエッセーを連載中。「kate spade new york」日本公式ブロガー。水墨画や日舞をたしなみ、着物を愛好する。著書に「お洒落きものイズム」(グラフィック社)など。LINEのスタンプ「ラヴ&ゴージャス」が発売中。kimonosnack.blogspot.com

ランキング