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【「日本の食」未来へつなぐ】(8-5) 柑橘の香り「世界に誇るスパイス」

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【「日本の食」未来へつなぐ】(8-5) 柑橘の香り「世界に誇るスパイス」

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おとぎ話のようなたたずまいの「ヴィラアイーダ」。宿泊施設もある=2014年2月11日、和歌山県岩出市(塩塚夢撮影)  「身近なところにハーブや野菜があって、食材がすぐそばにある。そんなイタリアで学んだことを日本でやるには、地元じゃないとできないと思った」

 だが、開店直後は「東京や大阪の店には負けない、とイタリアで習ってきた派手目の料理ばっかり出していた」。その結果、「飽きられて」徐々に客足が遠のいた。「すごい暇になってしまって。そのとき、東京で食べられるものを出してもしようがないと気づいた。東京への一極集中にあきたらない人たちが来てもらえるような、ここでしか食べられない味を出そうと考えたんです」

 単に地産地消だけではなく、野菜の味を生産者とともに畑から作っていく。そうしたスタイルから生まれる料理は、「やりすぎず、やらなすぎず」をモットーにした、華やかだけれど優しい味わいだ。「料理に限らず、作るのが好き。ゼロから1にするのが好きなんです」

 仏ショコラティエも

 かねいちの山椒(さんしょう)は、日本だけでなく海外の職人をも魅了している。フランスを代表するショコラティエの一人、フレデリック・カッセルさん(47)は、和の食材を探していたところ、かねいちの山椒に出合った。「最初に鮮烈な柑橘の香りがしました。もともと山椒はうなぎにかけるものと知っていたらどう感じたかわかりませんが(笑)、知らなかったので純粋に柑橘の香りをクリアに感じ、ショコラに使いたいと思いました」

 山椒に惚れ込んだカッセルさんは、山椒と一緒にマンダリンやグレープフルーツ、ライムなどのフレーバーを練り込んだチョコレート「パルファン・ド・サンショウ」を作り上げた。パリで開催されるショコラの祭典「サロン・デュ・ショコラ」に出品されたほか、1月20日からパリと東京、京都で販売される。「人の『手』で作っているものが私は好きです。石臼で挽いた山椒は熱が加わりすぎない分香りも格別ですし、ぬくもりを感じます。自分も職人ですから、職人が手間暇かけて作った食材を使えるのはとても幸せなことです」

 自身も「伝統を守り、未来へつなげる」ことを信念に掲げ、世界最高峰のパティシエらが加盟する協会「ルレ・デセール」の会長を務める。「時代が変わっても守りたいもの、それは私がこれまで受け継いできたものです。その伝統に新しいエッセンスを取り入れることが未来につながっていくわけですが、この2つはどちらがなくてもダメなのです。新しいものは古いものを知ってこそ、創ることができる。新しいものが生み出されると、今度は必然的に原点に戻る。そういう意味で伝統を守るだけでなく、ぶどう山椒を海外にも広めていこうとする未来を見据えた姿勢を、今回の出会いからとても感じました」

 さまざまな人の手で守られ、育まれてきた山椒。新たな人の手によって、さらに多くの人へと広がっていく。(取材・構成:塩塚夢、写真も/SANKEI EXPRESS

 【ガイド】

 ■ヴィラ アイーダ 和歌山県岩出市川尻71の5  (電)0736・63・2227(要予約)

※フレデリック・カッセル「パルファン・ド・サンショウ」は国内では三越銀座店((電)03・3535・1930)、ハイアットリージェンシー京都((電)075・541・3204)で販売。

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