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【「日本の食」未来へつなぐ】(8-4) 地元食材とコラボ 優しい味わい オーベルジュの山椒料理
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「ここでしか食べられないものを」という思いのもと作られる小林寛司(かんじ)シェフの料理は、華やかながらも優しい味わいで食べる者を魅了する=2014年12月18日、和歌山県岩出市(塩塚夢撮影) 食材という宝を生かすのは、料理人の仕事だ。地元の食材を使ったイタリアンで食通から注目を集めている和歌山県岩出市のオーベルジュ「Villa AiDA(ヴィラ アイーダ)」で、小林寛司(かんじ)シェフ(41)が、ぶどう山椒(さんしょう)の魅力を存分に引き出してくれた。
関西空港から車で40分ほど。おとぎ話に登場するようなたたずまいの一軒家が待っている。かねいちの代表、土田高史さんとともにアイーダを訪れた松田美智子さん。アイーダとの出会いは10年以上前だという。「和歌山にイタリアの三つ星店で修業したシェフが地産地消のレストランを開いていると聞いて。単に地元の食材を使うだけでなく、見事にシェフの味に昇華させていた。素晴らしいシェフだなと感激し、以来たびたび足を運ばせてもらっています」
この日ふるまわれた料理は、アミューズから食後のプティフールまで含め全9品。すさみ町のイノブタや中津のホロホロ鳥など、和歌山の恵みと組み合わせた。全てに山椒が使われているが、皿によって自在に使い分ける。粉山椒がほのかに香る泡のソースをはじめ、山椒バターであえたり、山椒の香味油を最後にふりかけたり。デザートでは山椒と同じ柑橘類(かんきつるい)であるミカン、キンカンのコンフィチュールに、山椒のソースを合わせ、さらにアールグレーティーのキャラメルを添えた香りの三重奏で一同をうならせた。
「香りが素晴らしい。やっぱり使い方。これが技術やね。今まで食べた山椒料理で一番うまい」と土田さんが絶賛すると、「山椒は世界に誇る日本のスパイスですからね。僕は和食材もスパイスも大好きなので」と小林シェフ。土田さんも「和歌山をスパイスの里にしたいと思ってるんです。なんか作ってほしいもんあります?」と盛り上がった。
「できるだけ和歌山のものでやっていきたいと思っている」という小林シェフは、地元の岩出市出身だ。19歳で料理の道に入り、21歳でイタリアへ。ミシュラン三つ星店(当時)「ドン・アルフォンソ1890」などで修業を積み、25歳で帰国。もともと田んぼだった土地にアイーダを開いた。(取材・構成:塩塚夢、写真も/SANKEI EXPRESS)