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【勿忘草】老犬の記憶
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生まれて初めて犬を飼ったのは、幼稚園のころだ。最寄り駅の交番で、おまわりさんが黒い中型犬を抱きかかえていた。尋ねると、迷い犬だという。数日間待って飼い主が現れなかったら引き取るということで合意し、その犬はわが家に引き取られたのだった。
犬が大好きだった私は、初代の犬がいなくなった後も親にねだり、その後2頭の大型犬を飼った。大型犬は短命というが、3頭目は10年以上長生きしてくれて、私が就職した後は地方支局まで遊びに来てくれた。
ひょんなことから、今や実家にいるのは大型犬でなく小さな猫2匹になったのだが、猫は犬より長生きだと言うし親の老後を共に歩いてくれそうだ。
しかし、残念ながらそうではない例も多い。高齢化社会になり、飼い主が先に亡くなりペットが残される、という悲劇が増えているらしい。世話をする人がいなければ、ペットは処分されてしまう。そのため、残されたペットをどうするかを遺言書に書き込む例も多いのだという。もちろんペットが飼い主の財産を相続することはできないが、世話をする第三者を定め、その世話にかかる費用を財産分与という形で譲ることはできるのだそうだ。
だが、高齢化が進んでいるのは人間だけではない。餌が良いのか、環境が良いのか、近年はペットも長生きするようになった。昨年末、私の友人の愛猫が死んだのだが、何と御年21歳。21年間、大事に育ててきた飼い主の愛情のたまものと言えるが、親元を離れ、長年1人暮らしをしてきた友人にとって、21年間連れ添った猫は大事な家族だったろう。病院通いをすることもなく、飼い主が横で寝ていた間に気づいたら逝っていたと聞いた。
別れは悲しいが、その最期に寄り添うことができれば、少しだけ納得できる気がする。3頭の犬を見送った私だが、1頭目のときは幼すぎて記憶にない。親から「元の飼い主が現れたので返した」と聞いた覚えがあるが、今思えば死んだのだろう。なにしろ、家中の食べ物を食べてしまうしつけのされていない犬だった。元の飼い主も困り果てて捨てたのかもしれない。それでも犬の温かさを最初に私に教えてくれた存在。別れは悲しいけれど、あのぬくもりは何者にも代え難いと独居暮らしの今、強く思う。(道丸摩耶/SANKEI EXPRESS)