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経済
揺らぐ「第三極」 主導権争いの恐れ スカイマーク ANAが支援正式表明、エアアジアも名乗り
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離陸準備中の全日空機(手前)とスカイマーク機。「第三極」を打ち出し、航空業界の価格破壊を先導してきたスカイマークだが、国内首位の全日空の意向をくんだ再建になれば、国内路線の実質的な寡占化が進み、運賃上昇につながる恐れもある=2015年2月23日、福岡県福岡市博多区・福岡空港(共同) 民事再生手続き中のスカイマークの再建を支援する共同スポンサーとして、全日本空輸を傘下に持つANAホールディングス(HD)と、アジア最大の格安航空会社(LCC)のエアアジア(マレーシア)が23日、名乗りを上げた。航空会社以外の企業は19日までに20社近くから支援表明があったが、再生計画案の策定では同業である航空会社からの支援策が鍵を握る見通し。スカイマーク側は共同スポンサー選びを急ぎ、3月上旬までに一定のめどをつけたい考えだ。
スカイマークは助言役のGCAサヴィアンを通じて共同スポンサーを募集しており、国内外の航空会社は23日が応募期限だった。日本航空は支援を見送った。
ANAHDとエアアジアはともに、スカイマークが保有する「ドル箱」の羽田空港の発着枠が狙いとみられる。エアアジアは日本市場開拓の足がかりにする一方、ANAHDは外資系航空会社の攻勢をかわしたい考えだ。
ANAHDは、出資を含む包括的な共同スポンサーとして応募。出資についてはスカイマークが持つ羽田空港の国内線発着枠が国による回収対象とならないよう、20%未満とすることを念頭に置いているようだ。事業面では羽田発着便の共同運航などを盛り込んだ。
ANAHDは過去にも、経営が悪化した新興航空会社であるエア・ドゥやスカイネットアジア航空(ソラシドエア)の再建に関与。スターフライヤーを加えた新興3社を対象に、出資や共同運航を実施し、人材も派遣して経営への関与を強めてきた。今回も同じ枠組みを想定しているとみられ、共同スポンサーに選定されれば、スカイマークがこだわってきた「空の第三極」としてのカラーが薄まるのは避けられない。
一方、エアアジアは、トニー・フェルナンデス最高経営責任者が日本市場に強い関心を寄せてきた。昨年7月には楽天などと組んで日本市場に再参入すると発表。スカイマーク支援に名乗りを上げたのも羽田発着枠が狙いとの見方が専らだ。
スカイマークとスポンサー契約を結んだ投資ファンドのインテグラル(東京)は、最低限でも過半数は出資したいとの意向。共同スポンサーについては「(再建で)プラスになるところがあればいい」(幹部)としているが、今後、出資比率や経営方針をめぐり主導権争いが起きる恐れもぬぐえない。
≪大口債権の弁済減額、焦点に≫
スカイマークに対し、「本命」とされるANAHDや旅行大手エイチ・アイ・エスなど約20社が名乗りを上げた。今後はこの中からスポンサーが選定され、裁判所の管理の下で再生計画案づくりが本格化する。今後の手続きの流れなどをQ&A形式で整理した。
Q そもそも、なぜスカイマークは民事再生法による再建を選んだのか
A 債務の大幅な減免を受けられる上、現経営陣が引き続き会社の再建を進められるからだ。会社更生法に比べて手続きが簡単で、申し立てから5~6カ月で計画が認可されることもメリット。
Q 今後の再生手続きの流れは
A まず、応募企業約20社の中からインテグラルとともに支援に当たる共同スポンサーを選ぶ。その後は3月18日までに各債権者が裁判所に届け出を行い、5月に債務総額が決まる。これを受けて5月29日までにスカイマーク側が裁判所に再生計画案を提出し、6月下旬をめどに開かれる債権者集会で計画案への同意を取り付ける算段だ。
Q 債務はどの程度減免されるのか
A 民事再生での弁済率(負債総額に対する支払率)は数%~30%程度となることが多いが、これはケースによりまちまちだ。今回の件でスカイマークは負債総額を約710億円としているが、欧州エアバスの超大型機「A380」の購入契約解除に関する違約金は協議中のため、確定していない。エアバスを含めた大口債権者が弁済額の減額をどこまで受け入れるかがカギになるだろう。
Q エアバスとの減額交渉が難しいのでは
A エアバスは7億ドル(約840億円)もの違約金を求めており、スカイマークは引き続き交渉中だ。仮に両社が主張する債務の額に大きな開きが出た場合、裁判所が間に入り、金額を決める「査定」の手続きに入るが、これで双方が納得しなければ訴訟にもつれ込む恐れもある。(SANKEI EXPRESS)