ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
経済
日立、伊鉄道関連を2500億円で買収 官民一体で中国に競り勝つ
更新
過去最大規模の企業買収に合意した日立製作所の中西宏明執行役会長兼CEO(最高経営責任者)=2015年2月24日午後、東京都千代田区(宮崎裕士撮影) 日立製作所は24日、鉄道事業強化を目的に、イタリアの防衛・航空大手フィンメカニカと鉄道関連事業の買収契約を結んだと発表した。傘下にある鉄道車両の製造会社と、信号システム事業を手がける会社の2社をそれぞれ買収する。買収総額は約2500億円と、日立の企業買収としては過去最大規模となる。
今回買収するのは、フィンメカニカ傘下の鉄道車両メーカー「アンサルドブレダ」と、信号大手「アンサルドSTS」で、欧州を中心に受注実績を持つ。
買収が完了すれば、日立の鉄道事業全体の売り上げは2.5倍の年4000億円規模に拡大する。
フィンメカニカは、昨夏に鉄道事業売却を計画し、日立や仏企業など複数の陣営が名乗りを上げていたが、交渉途中で中国企業も買収の意向を伝え、最終判断に時間がかかっていた。
日立は、これまで国内と英国を中心に鉄道事業を展開。英国では、ロンドン中心部と都市間を結ぶ高速鉄道の車両更新事業などを受注してきた。今回の買収により世界規模での事業展開を加速する。
≪官民一体で中国に競り勝つ≫
今回の買収話は、日立という一企業のみならず、日本企業全体にとっても大きな“成果”となった。
日立が、フィンメカニカの鉄道事業買収に踏み切ったのは、世界的に鉄道インフラの新設や更新需要が増加する中、受注機会を取りこぼさないためにも、規模拡大が不可欠との強い思いがあったからだ。
世界で鉄道事業の「ビッグ3」と言われるのは、カナダのボンバルディアや独シーメンス、仏アルストムの3社。
いずれも鉄道事業で8000億円前後の売り上げ規模がある。対する日立の鉄道事業は2013年度で1682億円。しかし今回の買収で、一気に売り上げ規模を約4000億円程度まで倍増できると踏んでいる。中西宏明会長兼最高経営責任者(CEO)は24日の記者会見で「今回の買収でビッグ3に遜色ないレベルに到達した」と強調した。
今回、買収する伊フィンメカニカ傘下2社のうち、鉄道信号事業で世界2位の「アンサルドSTS」を取り込めることも日立にとっては大きなメリットだ。
鉄道車両だけでなく、ITを活用した鉄道運行システムなどを含めてトータルに対応できる強みを生かした受注の可能性が広がるからだ。
今回の買収で、日立の前に立ちはだかったのが中国企業だ。IT大手が途中から買収に名乗りを上げ、日立との一騎打ちとなった。日本は安倍晋三首相(60)が昨年10月にイタリアを訪問した際、今回の買収に言及するなど、官民一体の交渉で中国勢を下した。
今回は一敗地に塗(まみ)れた中国だが、虎視眈々(こしたんたん)と新興国市場開拓を狙っている。国内では年内をめどに、国有大手の中国北車と中国南車が経営統合して新たな鉄道事業会社を設立し、規模拡大を図ろうとしている。
安倍晋三政権も、成長戦略を進める中で、日本の技術力を生かせる鉄道など社会インフラの輸出を積極的に後押ししている。昨年9月、インドのナレンドラ・モディ首相(64)が来日した際、安倍首相が日本の新幹線輸出を働きかけるなど、トップセールスも精力的だ。
こうした中、今後もインフラ市場の争奪戦では、中国企業などをはじめ、世界の企業大手が攻勢をかけてくることは間違いない。生き残りをかけた戦いの中で、日本の高い技術輸出を着実に伸ばすには、官民一体となった取り組みが一層求められる。(那須慎一/SANKEI EXPRESS)