SankeiBiz for mobile

高速鉄道輸出 官民一体で日本反撃 高値イメージ払拭 欧州・中国と受注競争

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの経済

高速鉄道輸出 官民一体で日本反撃 高値イメージ払拭 欧州・中国と受注競争

更新

日本の新幹線が輸出された台湾高速鉄道の車両=2013年11月20日、台湾・台中市の高鉄台中駅(今野顕撮影)  新興国を中心に世界で活発化している高速鉄道建設プロジェクトをめぐり、日本と欧州、中国勢の受注競争がヒートアップしている。特に猛スピードで「鉄道外交」を繰り広げる中国は、建設費の安さを武器に攻勢をかけている。日本もJR4社を中心に新組織を立ち上げるなど、受注獲得に向けた動きを強めている。高速鉄道技術は、安倍晋三政権が成長戦略に掲げるインフラ輸出の「大きな柱になる」(国土交通省幹部)と期待されるだけに、官民一体になった「総合力」が問われそうだ。

 新幹線は台湾向けのみ

 中国は、アジアやアフリカをはじめ、世界規模でインフラ事業への関与を拡大させる構えをみせている。その要となるのが鉄道分野だ。すでにトルコでは高速鉄道事業に参加し建設を請け負っているとされる。

 さらに習近平国家主席は今年9月に訪問したインドでモディ首相と会談し、高速鉄道への協力を約束した。10月には李克強首相がロシアを訪問し、メドベージェフ首相と会談。ロシアが計画している100億ドル規模の高速鉄道計画に中国企業が参画することで一致した。

 高速鉄道事業での中国の強みは価格競争力だ。海外勢に比べて建設コストは半分程度とされ、これを武器に受注活動を優位に進めようとしている。

 ただ、中国では2011年に、浙江省を走る高速鉄道で多数の死傷者が出る大事故が発生。技術や安全性への懸念がぬぐえないとの指摘も多い。今年11月には、中国企業に決まっていたメキシコでの高速鉄道プロジェクトの受注が、白紙撤回された。

 日本にとっては、仏アルストムや独シーメンスといった巨大メーカーが中心となって動く欧州勢も強敵だ。情報収集やコンサルティング能力が高く、ノウハウや実績で勝る。韓国の高速鉄道も、仏高速鉄道「TGV」のシステムが採用された。綿密に調査をして事業計画を作り上げ、受注を有利に導く戦法だ。

 一方、日本の新幹線は最短3分間隔で出発する正確性に加え、1列車当たりの平均遅延時間が1分未満という定時性を誇る。開業から50年を経て乗車中の利用者の死者ゼロという「安全神話」も築き上げた。

 ただ、新幹線の輸出実績は、2007年開業の台湾高速鉄道のみにとどまる。「新幹線の安全性や信頼性の高さは知られているが、『価格が高い』と思われている」(JR関係者)こともあり、受注競争で苦戦が続く要因の一つになっている。

 オペ・メンテ能力切り札

 そんな中、日本勢も反撃を開始した。4月にJR東海、東日本、西日本、九州の4社が「国際高速鉄道協会」を設立。鉄道関連メーカーや大手商社も加わったオールジャパンの体制で技術を結集し、コスト削減など競争力の強化を図るのが狙いだ。

 さらに、鉄道を中心としたインフラ輸出を支援する官製ファンド「海外交通・都市開発事業支援機構」が10月に発足。この機構は官民から集めた資金を元手に海外企業に出資し、日本企業の受注を資金面からサポートする。

 まずはシンガポールとマレーシアを結ぶ高速鉄道などの受注を目指す。このほかインドの高速鉄道計画の一部で、JR東日本などが事業化調査を獲得しており、こうした案件を着実に受注に結びつけたい考えだ。

 JR東の冨田哲郎社長は「30~40年間の運営管理を含めると新幹線は高くはなく、優れたオペレーションや、メンテナンスを切り札に勝ち抜きたい」と、中国や欧州勢との競争に自信をみせる。

 大手商社の幹部は「受注を勝ち取るには、JRグループや鉄道関連メーカー、商社などの民間と、政府が有機的な連携の態勢を築けるかがカギを握る」と話している。(SANKEI EXPRESS

ランキング