ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
政治
同性パートナー条例 自民から異議
更新
同性カップルの証明制度について説明する渋谷区の桑原敏武区長=2015年2月12日、東京・渋谷区役所(共同)
東京都渋谷区(桑原敏武区長)が同性カップルを「結婚に相当する関係」と認め、証明書を発行する条例案を提出することに、政府・自民党から異議が相次いでいる。「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し…」としている憲法24条に反しかねないのが理由だが、この動きは他の自治体にも波及。思わぬところから憲法論議に火が付いた格好で、地方分権のあり方も問われそうだ。
桑原氏(79)がこの条例案を発表したのは2月12日。「多様性のある社会をつくることが活力を生む。渋谷区からの発信が国を変えていくかもしれない」と語った。同性同士をパートナーとして証明するこの制度。条例案は3月区議会に提出する予定で、全国初の試みだ。
対象は区内に住む20歳以上の同性カップル。同性カップルがアパートの入居や病院での面会を、家族ではないことを理由に断られるケースがあるのを踏まえた。法的拘束力はないが、区は不動産業者や病院などに、証明書をもつ同性カップルを夫婦と同等に扱うよう求める方針だ。
渋谷区がホームページで公表している条例案の概要には参考資料もついており、世界各国の状況を明らかにしている。それによると、パートナーシップ(何らかの夫婦に準じる権利)を認めているのはドイツ、イタリアなど25カ国、同性婚(同性同士の婚姻を認めること)はオランダ、スペインなど19カ国が認めている。条例案の正当性を訴えようとしているのは間違いない。
この条例案に異議を唱えたのが、保守系として知られる赤池誠章文部科学政務官(53)だ。赤池氏は自らのブログで「法や条例は憲法に違反することはできません。その自覚がおありになるのでしょうか。私は地方分権が進みすぎてしまい、国が分裂混乱してしまうことを懸念しております」と書き込んだ。
憲法違反になりかねないのはもとより、地方分権も事の次第では「国家分裂」に陥りかねないというわけだ。外国人への地方参政権付与をめぐる問題でも同様のことがいえる。政策判断を外国人に委ねる事態は「国家分裂」といえる。そもそも憲法15条で選挙権は「国民固有の権利」としている。住民投票条例で外国籍の住民に投票の資格を与えている自治体がすでにあるのは、見逃せない。
赤池氏と対照的なのが日本を元気にする会の松田公太代表(46)だ。松田氏は2月18日の参院本会議で「憲法24条は同性婚を認める上で問題となるとお考えか。なるとお考えの場合は、憲法改正の候補として検討してはいかがか」と質問。首相は「現行憲法の下では同性カップルに婚姻の成立を認めることは想定されていない。同性婚を認めるために憲法改正を検討すべきか否かは、わが国の家庭のあり方の根幹に関わる問題であり、極めて慎重な検討を要する」と答弁した。
果たして桑原氏とはどんな人物なのか。平成15年に区助役から初当選し、現在3期目。今期限りの引退を決めている。自民、公明両党推薦候補として区長選を戦ってきたが、自民党からは「聞く耳をもたず独裁だ」(都連幹部)との批判が漏れる。自民党との距離は広がるばかりで、別の都連幹部は条例案について「あり得ない。成立したら、次期区長が条例をなくす」と突き放す。
もっとも条例案が否決されても、渋谷区に追随しそうな動きはすでに出ており、横浜市の林文子(はやし・ふみこ)市長(68)は2月18日の記者会見で「強い結び付きをもっている同性カップルは少なくない。社会の一員として受け入れていくのは大事」と述べ、支援の形を検討する考えを表明。世田谷区の保坂展人区長(59)もすでに独自の支援策の検討を進めている。(坂井広志/SANKEI EXPRESS)