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震災後の「今」を楽曲に込めて クラムボン
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バンド、クラムボン=2014年2月10日(提供写真) 原田郁子(Vo、Key)、ミト(Ba、G、Vo etc)、伊藤大助(D)からなるクラムボン。個々の活動も多彩な彼らが、結成20周年を迎えて5年ぶり9枚目となるオリジナルアルバム『triology』を発表した。原田郁子に話を聞いた。
「5年というのは意図して空けたわけではないんですけど。細かく各地を回っていくツアーを一年がかりでやっていくと体力を全て使い果たすというか、とてもその間にアルバムを作るのは難しかった。カバーアルバム『LOVER ALBUM 2』(2013年)をやったことも今思うと一つのウオーミングアップで、自分たちにとって“今”がどういう感じなのか、好きな曲を通して見つけていく作業というか」
3人は専門学校で出会い、結成。「出会った時から、三者三様だってことはわかっていて、でも楽器で音を出すと別のコミュニケーションが始まる」という関係性がここまで続いてきた。今回はミトが完成させてきたデモ音源に、アレンジなどものすごく細かく指定があったため、それを生音にさしかえていく作業から始まったという。
「やっぱりこれまでクラムボンを引っ張ってきたのは、彼の音楽性やアイデアによるところが大きいんですよね。デモで曲が来るたびに“おぉ、こうきたか”と驚かされる。そのクオリティーに応えなきゃというプレッシャーは常にあって、今回、歌詞には大いに悩みました。自分の内側にある、言語化できない部分、あまり思い出したくないこととか、触れてもらいたくないようなところまで潜っていって。震災以降、今のことを歌にするのは難しいです。まだまだ言葉にできないとはわかっているんだけど、でも“しないと次には行けない”という気持ちもあって、徹底的に苦しかったですね」
一番時間のかかった曲は、シングルになった「yet」という。
「鳴っている音をまず肯定する、そこから始まって、このすさまじい演奏の上で、私は一体何を歌えばいいんだろうって、一言も言葉が出てこなくなった。メンバー2人と、“あれからどうだった?”ってあらためて話したことはないんですけど、このほとばしるエネルギー、渦に巻かれていくような状態こそ、今なんだと思えて、その姿をさらしてみようと」
他にもリテイクした「Re-ある鼓動」やクラムボン史上、最も転調の多い曲だという「バタフライ」、deerhoofのsatomi matsuzakiも作詞に加わった「the 大丈夫」、2人組のラップグループ、MOROHAも参加した「Scene 3」を含め、さまざまな表現を用いて演奏や歌に込めた思いがこの5年間を象徴するかのように結実している。本質を問う強いメッセージや広義の愛を感じ取れる、生命力を与えてくれるアルバムになった。(音楽ジャーナリスト 伊藤なつみ/SANKEI EXPRESS)