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社会
【朝鮮総連トップ宅捜索】「不文律」破る マツタケ不正輸入の関係先
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自宅への家宅捜索後、記者団の質問に応じる朝鮮総連の許宗萬(ホ・ジョンマン)議長=2015年3月26日午前、東京都杉並区(三尾郁恵撮影) 日本が科している経済制裁の一環で輸入が全面禁止されている北朝鮮から、中国産と偽ってマツタケを輸入したとして、京都府警と神奈川、島根、山口県警の合同捜査本部は26日、外為法違反の疑いで、東京都台東区の貿易会社「東方」の社長ら2人を逮捕した。関係先として、朝鮮総連の許宗萬(ホ・ジョンマン)議長、南昇祐(ナム・スンウ)副議長の自宅など6カ所に家宅捜索に入った。警察によると、朝鮮総連トップの自宅に家宅捜索が入るのは初めて。
逮捕されたのはいずれも韓国籍で、「東方」社長の李東徹容疑者(61)=千葉県市川市=と社員の金芳彦容疑者(42)=東京都江東区。捜査本部によると、李容疑者は「理解できない」、金容疑者は「身に覚えがない」と供述し、いずれも容疑を否認している。
逮捕容疑は、2010年9月24日、北朝鮮産のマツタケ約1200キロ(輸入申告価格約300万円)を、中国・上海を経由して中国産と偽って不正に輸入したとしている。
輸入されたマツタケは日本国内で販売されており、捜査本部は外貨獲得が目的とみて詳しく調べている。捜査本部によると、不正輸入には朝鮮総連や別の会社が関与していた可能性があるといい、捜査本部は14年5月に関係先十数カ所を家宅捜索。証拠品を精査し、不正輸入を裏付けた。
この際、許氏の親族が役員を務めるなど、許氏一家と関わりが深い企業も捜査対象となっており、押収品の中には、許氏が北朝鮮に宛てた書類などがあった。
日本は北朝鮮の核実験に伴い、経済制裁の一環として、06年から北朝鮮からの輸入を全面禁止。輸出についても09年から全面禁止にしている。
≪粛々と捜査 拉致再調査へ圧力≫
朝鮮総連トップの許宗萬議長宅に捜査のメスが入った。本国へ送るカネ集めで地位を築き、北朝鮮の独裁体制への朝鮮総連の従属も強めさせたといわれる人物がカネに絡む事件で足下をすくわれた。日本人拉致被害者再調査の報告が滞る中、捜査機関が外交に左右されない姿勢を示すことは、結果的に報告を促す「圧力」ともなりそうだ。
「無法で差別的な捜査は許されない。徹底的に戦う」。26日、自宅への家宅捜索後、報道陣を前に許氏はこう語気を強めた。
国交のない日朝間で朝鮮総連は「大使館」で、議長は「大使」だ-。こうした朝鮮総連側の主張に沿って、中央本部が捜索されてもトップの自宅は警察が手を出さないことが「不文律」ともみられてきた。
この事件に絡む家宅捜索は昨年5月、今回を上回る規模で実施されていた。許氏が金正恩(キム・ジョンウン)政権に送った極秘文書も見つかり、「マツタケ不正輸入容疑を裏付ける多くの資料が得られた」(捜査関係者)とされた。
それでも逮捕者がなかった背景について、政府関係者は「日朝協議が進む中、北朝鮮を刺激するのは得策ではないとの空気があったようだ」と話す。26日の強制捜査はその「空気」とともに、議長宅に踏み込んだことで「不文律」も打ち破った。日朝関係者は「拉致被害者に関して誠実な回答がない中、粛々と捜査を進めることが、かえって圧力になるとの判断があったのではないか」とみる。
許氏は今、微妙な立場にあった。多額の資金集めの“功績”が本国に認められ、トップに上り詰めたといわれる半面、約627億円の債務により中央本部の競売を招いた。落札企業が転売した会社から間接的に賃借することで立ち退きという「最大の失策」は免れた。ただ、転売に絡み、急な資金調達を強いられた上、組織員に経緯説明もなく、内部で不満がくすぶっているという。
制裁の一部解除で昨秋、8年ぶりに訪朝しながら金正恩第1書記(32)に面会できず、長年後ろ盾だった工作機関225局トップの康寛周(カン・グァンジュ)氏が同時期に死亡した。
いまも続く輸出入禁止で“集金マシン”としての組織機能も低迷していた。マツタケ不正輸入容疑も追い込まれていた証しともいえる。一方で、公安関係者は「不正輸入は氷山の一角。今回の捜索は正恩政権と許一家の資金ルートの解明にある」とし、捜査対象がさらに広がる可能性を指摘する。
政府は(1)制裁措置の延長(2)中央本部賃借問題も不正があれば見逃さない-方針を示している。今回、捜査当局に厳正な捜査を委ねることで、再調査進展に向け圧力となる3つのカードを手にしたことになる。(桜井紀雄、鈴木俊輔/SANKEI EXPRESS)