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「おしどり夫婦」の真実 鳥は4割が浮気の子、人間は?

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「おしどり夫婦」の真実 鳥は4割が浮気の子、人間は?

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ヨーロッパでは赤ちゃんを運んで来る鳥として有名なコウノトリは一夫一婦=2015年1月31日(唐木英明さん撮影)  仲のいい夫婦を「おしどり夫婦」と言うが、ほとんどの鳥が一夫一婦で、夫婦が協力して子供を育てる。実は、動物の世界では一夫多妻が一般的だ。

 「遺伝子を増やしたものだけが生き残る」という進化の法則から考えると、何億もの精子を作るオスは、メス選びに時間を浪費しないで多くのメスに子供を作らせることが重要。一方、少数の卵子しか作れないメスは、最も優れたオスの遺伝子を選ぶことが重要になる。一夫多妻は両者の要求に応える制度といえるだろう。

 これに対し、多くの鳥が一夫一婦を選択しているのは、卵という超未熟児を生むためだ。その結果、鳥は空を飛ぶことができる軽い体を手に入れたが、長い子育てを援助する夫も必要になった。

 そこでメスは子育てを手伝ってくれるオスを探さなくてはならない。人間も最近は育児を手伝ってくれる“イクメン”が人気と聞くが、選ぶポイントは優しさだろうか。

 鳥のメスが考えるイクメンの条件は忍耐心。どうやって見分けるかというと、メスはオスが言い寄っても必ず逃げる。本当に嫌な時は飛び去るが、大体は歩いて逃げる。そして、最後まで追ってきたオスを忍耐心があるオスとして、メスは求愛を受け入れるのだ。

 ≪気楽そうに見えて…遺伝子増やすため熾烈な戦い≫

 忍耐強く優しい夫と一緒になってめでたしめでたしと思われていたが、遺伝子親子鑑定で驚愕(きょうがく)の事実が明らかになった。鳥の子供の約4割が浮気の子だったのだ。つまり、いっしょに子育てをしていたイクメンのオスは、浮気相手の子を一生懸命育てていたことになる。

 一夫一婦の鳥のメスも、優れたオスの遺伝子を求める本能は健在だ。だからこっそり浮気をする。夫はもちろん用心し、妻に言い寄るオスを追い払うが、オスはオスで浮気の相手を探す。それが鳥の世界だ。

 ところで、鳥の中でもオシドリは実は一夫多妻で、一番きれいなオスだけが多くのメスを獲得する。夫婦でいるのは交尾の期間だけで、オスは子育てを手伝わない。また、一番になれないオスに相手はいない。つまり、オシドリのオスはイクメンとはほど遠く、同じメスと一生を共にするわけでもなく、「おしどり夫婦」ではない。

 一夫多妻の鳥の特徴はオスがきれいでメスが地味なこと。地味な姿は敵に見つからないための作戦で、きれいなオスは敵に見つかりやすくその寿命は短い。それなのになぜ、メスはきれいなオスを選ぶのだろうか。それは、一番きれいなオスを選ぶことで自分の息子が一番になれば、息子が一気に遺伝子を増やしてくれるからだ。

 息子の寿命が短くても、孫が多ければ母親の遺伝子は未来へと引き継がれる。気楽そうに見える鳥たちも、実は、遺伝子を増やすための熾烈(しれつ)な戦いをしているのだ。(写真・文:東京大学名誉教授 唐木英明/構成:文化部 平沢裕子/SANKEI EXPRESS

 ■からき・ひであき 1941年、東京都生まれ。73歳。東大名誉教授。獣医師。公益財団法人「食の安全・安心財団」理事長。著書に『不安の構造』など。

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