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京都三奇祭 やすらい祭 流行病防ぐ「花鎮め」の祈り
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家の前で太鼓や鉦(かね)を打ち鳴らし、飛び跳ねながら舞いを披露する鬼役の少年たち=2015年4月12日、京都市北区紫野上野町(田中幸美撮影) 「やすらい花よ よーほい」
赤毛や黒毛のかぶり物をした鬼役の少年たちが太鼓や鉦(かね)を打ち鳴らして歌いながら、辻々をめぐってゆく。途中家々の前では鬼たちは輪になって髪を振り乱して踊った。
12日午後、京都市北区の今宮神社一帯で、「やすらい祭」という珍しい祭りが行われた。この祭りは、鞍馬(くらま)の火祭、太秦(うずまさ)の牛祭(現在休止)とともに京都三奇祭の一つに数えられる。
祭りには、桜の散るころはやるとされた疫病を鎮める願いが込められているという。長かった冬が終わり、一斉に花開く春。一方で花から飛び散る花粉は、人々に流行病をもたらす悪霊ともみなされた。やすらい祭は、疫病の蔓延(まんえん)を防ぐ「花鎮め」の祈りだ。起源は平安時代に遡(さかのぼ)るというから、1000年以上の歴史を持つ。また、京都の祭りのトップを切って行われる祭りであることから、この日(4月の第2日曜)が好天に恵まれるとその年の京都の祭りはすべて晴れると言い伝えられる。
祭りは今宮神社地域のほか京都市内北部の3カ所で行われ、祭りを継承する保存会は市内に4つある。今回見たのは今宮神社の北に位置する北区紫野上野町(むらさきのうえのちょう)の住民らが作る「今宮やすらい会」(小川佳男会長)によるものだ。
今宮神社の神職におはらいを受け正午過ぎ、祭りの行列は赤組と青組の二手に分かれて今宮神社の北東にある光念寺を出発した。小川佳男会長(67)は出発に先立って「楽しい祭りなのでにぎやかに回ってもらいたい」とあいさつした。
≪太鼓を鳴らし 鬼が舞い踊る≫
祭りの行列は、地域の長老を先頭に、鉾(ほこ)や幡(はた)を掲げる者、大きな花笠、「かんこ」と呼ばれる小鬼、赤毛と黒毛の鬼、囃子方(はやしかた)などが続き、2組合わせて総勢90人に上る。このうち祭りのシンボルとなるのは、高さ約2メートルの大きな花笠。緋色の幕をかけ、傘の上には桜、椿、山吹、柳、松の5種類の花が飾られる。この傘の中に入ると無病息災・厄除けになるといわれることから、花笠を見つけると老若男女が競い合うようにして入っていた。小鬼役の少年が向かい合って胸につけた太鼓を鳴らして舞うと、あちこちから「かわいい」の声が上がっていた。
3時間かけて地域一帯を練り歩いた後、午後3時頃には今宮神社に到着。大勢の参拝者らが見守る中、本殿前などで舞いを披露した。鬼たちが赤や黒の飾り髪を振り乱しながら鉦(かね)や太鼓を鳴らし疫病退散の願いをこめて舞い踊ると大きな拍手が送られた。
小川会長は「ここ数日お天気が悪い中、きょうだけは晴れてありがたい。大勢の人に昔ながらの祭りをお見せすることができてよかった」と話していた。鬼を演じるのは2回目という中川巴暖(はのん)さん(14)は、「多くの人に見守られ、やすらい祭が大きくなっていくのはうれしい」。また、同じく鬼を演じた山田雄也さん(14)も「ちょっと恥ずかしかったが、楽しかった」と満足そうに話した。
やすらい祭は、元来3月10日に行っていたが、明治改暦以後4月10日となり、今では毎年4月の第2日曜に行われる。1987年には、国の重要無形民俗文化財に指定された。(田中幸美(さちみ)、写真も/SANKEI EXPRESS)