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【RE-DESIGN ニッポン】鹿の子絞り 手仕事ゆえの独特造形

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【RE-DESIGN ニッポン】鹿の子絞り 手仕事ゆえの独特造形

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雪花絞りの仕上がり。職人の手作業と幾何学模様を作り出す緻密な計算が作り出す造形だ=2015年3月24日(提供写真)  千数百年の歴史を持ち、京都でも盛んに行われてきた染色技法の一つに、「鹿の子絞り」がある。絞りで表現された紋様が子鹿の背の模様に似ていることが名前の由来だ。一つ一つ手で絞り、染まるところと染まらないところを分けることで表現する技法であり、絞った部分が立体的になるところ、染めの部分にグラデーションが出るのが特徴だ。「RE-DESIGN ニッポン」の第12回は、この「京鹿の子絞り」の若き担い手が手がける「たばた絞り」の工房を訪ねた。

 技法と危機

 絞り染めの技法は、古来より世界各地で行われてきた。日本に伝わってからは、染色技術の発達とともに独自の工夫が施され、「鹿の子絞り」など複雑な技法が生まれた。しかし、現在では着物を着る人が減るとともに絞り染めの従事者も少なくなり、生産拠点は中国などに移っているという。今回訪ねた「たばた絞り」の田端和樹さんは「自分が最年少の京鹿の子絞り職人で、次に若いのが父。それくらい後継者がいない」と語る。着物需要の減少はもちろん、絞り染めに求められる根気強さと体力、技術に若い人が耐えられないことが大きな要因という。

 今回、「帽子絞り」と「雪花絞り」の様子を拝見したが、全ての工程で繊細かつ力が求められる作業を根気強く繰り返していかなければならないことが伝わってきた。この手間ひまが結果として価格の上昇につながっている面もある。

 試行錯誤で編み出す

 板で締めて染料がしみこまないようにすることで模様を作る「板締め」の技法は、ほぼ日本だけで行われている染色技法だ。その中でも「雪花絞り」は、比較的作業効率が高く、柄がはシンプルでモダンなので、現代の消費者の好みに合う。そこで田端さんは主に愛知県の鳴海地方で発展してきた「雪花絞り」の技術を独力で身につけた。「鳴海で教えてもらっても、それはあくまで『鳴海の雪花絞り』になる。自分で試行錯誤して編み出した技術は自分だけのものになる」と田端さんは語る。その結果として編み出された雪花絞りは「たばた絞り」となり、アパレルブランドのSOU SOUなどとコラボした製品が人気を集めるようになった。

 立体的表現と変化

 現代の好みに合い、コストも見合う商品は消費者から求められる。田端さんは「絞りには、職人の手仕事だからこそ可能となる造形と表現がある」と言う。通常の染めではあくまで二次元表現に留まるが、絞りはひもなどで絞っているためその部分が縮み、立体的な表現ができる。さらに使い込んでいくうちにこの縮みが少しずつ伸びていき、変化も楽しめる。絞っている部分も毛細管現象で染料が次第ににじんでいくため、独特のグラデーションが生み出されることも特徴だ。

 こうした絞りの魅力を発信するために田端さんは毎日ブログを欠かさず書き続けている。絞り染めと同じく、根気強さがなせることである。そうした努力もあって、少しずつ認知が高まり、興味を持った若い人が訪ねてくるようになったという。田端さんが「最年少」絞り職人という呼び名ではなくなる日も近いはずだ。(「COS KYOTO」代表 北林功/ SANKEI EXPRESS

 ■帽子絞り 模様にする部分に染色液が染み込まないように、芯を入れてビニール、竹皮、などで帽子のように覆って麻糸等で巻き付けて染料に浸して染める。帽子の部分が染まらず、絵模様ができあがる。

 ■雪花絞り 板で締めて防染し模様を作る「板締め」の一つ。布を縦に4つから8つ折りにしたものを四角や三角形にたたみ、板を両側から当てて強く締め、折り目部分などを染料に浸して染める。毛細管現象によって少しぼやけた筋や幾何学模様ができあがる。

 ■きたばやし・いさお 1979年、奈良県生まれ。現代に受け継がれる多様な素材や技術、人を「京都」の感性で融合し、国内外に発信する「COS KYOTO」代表/コーディネーター。「TEDxKyoto」ディレクター。「たばた絞り」のサンプルは、COS KYOTOのショールームで展示している。HP:cos-kyoto.com

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