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【RE-DESIGN】青森発、世界に飛び出したブナのインテリア
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バウムクーヘンのようになった平面の巻き板を、湯呑みを使って立体に形を作り上げていく=2014年9月13日(ブナコ提供) 青森を象徴する木材であるブナ。この素材を独自の技術で加工することで生み出されるランプや家具がある。トレーなどキッチンウエアに用いられてきた素材と技術は、時代に合わせて変化し、現在は世界の富裕層が求めるインテリアとして人気だ。「Re-design ニッポン」の第9回は、苦境から一転、新たな市場を海外に見いだした素材と技術を取り上げる。
世界自然遺産の白神山地がある青森県南西部には、国内でも珍しいブナ林の自然林が広がる。ブナは「森のダム」と呼ばれるほど水分が多く、乾燥する過程で曲がりやすい性質があるため、建築用材としては一般的ではない。この地元の豊富なブナ材とその曲がりやすい特徴を生かした商品を製造しているのが、弘前に拠点を構える「ブナコ株式会社」(以下「ブナコ」)である。
ブナコの製造技術はとてもユニークだ。まずブナを厚さ1ミリほどのテープ状に裁断加工し、芯材に何重にも巻き付ける。それを湯飲みを使って職人が一つ一つ押し出していくことでさまざまな形を作り上げていく。倉田昌直社長によると、いろいろな道具を試した結果、湯飲みの丸さと硬さ、そして持ちやすさが最適だったという。手仕事であるがゆえに、さまざまな形状を自由自在に作り上げられるという強みもある。
「ブナコ」の名前は、ブナのテープをコイル状に巻くという「ブナコイル」と、津軽弁で「愛らしいもの」「大切にすべきもの」を「◯◯コ」と呼ぶことに由来している。もともとトレーや器などキッチンウエアを主力商品として製造していた。高度成長期以降、百貨店を通じた販売を主力に売り上げを伸ばしたが、バブル崩壊で百貨店自体の売り上げが激減。販路を百貨店に頼っていたブナコは倒産寸前まで追い込まれた。
転機となったのは、アメリカの店舗でブナコのトレーを見たという東京のインテリアショップから、「この素材と技術でランプを作ってほしい」との依頼がきたことだった。開発資金もないため、倉田社長は新たな挑戦に踏み出すかどうかためらったが、相談相手だった弟から「限界は兄貴が勝手に決めているだけ」と言われ、決心がついたという。県の助成金などを得て依頼されたランプの開発をやり遂げ、世界のインテリア市場に向けた活路を切り開いた。
開発したランプを展示会で発表したところ、百貨店を通じたキッチンウエアとは異なる市場が見えてきた。「デザインを重視する付加価値の高いインテリア市場では、ブナコの素材や技術を生かした商品が通用する」と確信した倉田社長は、さまざまなインテリア用品を意欲的に手がけるようになった。
世界にこぎ出すなかで、倉田社長は「デザイナーの要望には基本的にノーと言わない」という柔軟な姿勢をとった。職人たちが持つ、手仕事ゆえの柔軟で確かな製造技術には自信があった。だからこそ、「ブナコはデザイナーのアイデアを具体的な形に実現する技術が強み」と考えたのだ。
こうした姿勢が欧米を中心に世界中のインテリアデザイナーから好感され、飛躍につながった。弘前の「ブナコ」は、グローバルな「BUNACO」となったのである。ブナコは昨年京都にオープンしたリッツ・カールトンホテルなど一流ホテルのランプも手がけている。
素材や技術は弘前で培われてきたものをそのままに、キッチンウエアからインテリアへと大きく商品戦略を変更したことで、新たな市場を見いだしたブナコ。倉田社長は現在、その経験を生かして青森のモノづくり企業をサポートしている。地域ならではのモノづくり、つまり世界の中で唯一無二の強みを生かして、世界に羽ばたいていく企業を増やすのが次の仕事だ。(「COS KYOTO」代表 北林功(いさお)/SANKEI EXPRESS)