ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
トレンド
【RE-DESIGN ニッポン】津軽打刃物 350年の歴史が裏打ち
更新
赤熱した鉄を鍛える8代目吉澤剛さん。津軽打刃物の文化と技術、そして想いを受け継ぐ職人だ=2014年8月28日(提供写真) 青森県の弘前市(ひろさきし)はかつて津軽藩の城下町であり、刀づくりの鍛冶屋が数多く存在していた。その津軽藩から作刀を命ぜられて以来、350年の歴史に裏打ちされた津軽打刃物作りを続けているのが弘前市金属町に拠点を構える「二唐(にがら)刃物鍛造所」である。「RE-DESIGN ニッポン」の第5回は、この刃物作りの文化と技術を受け継ぎ、現代の生活に合った包丁作りを続ける現場を訪ねた。
津軽地域は、すでに平安時代には岩木山麓で大規模な製鉄が行われていたことが遺跡群などからわかっているように、日本有数の製鉄の歴史を誇る。その流れの中で、二唐刃物鍛造所は江戸時代に津軽藩の武器製造所として召し抱えられ、かつては作刀のみならず、大砲や軍船までの製造に携わっていた。二唐家はこうした350年に及ぶ伝統を受け継ぐ日本有数の刀鍛冶の名門である。特に5代目刀匠「二唐国俊」は、20年に一度行われる伊勢神宮の式年遷宮において、奉納刀を2度製作するなど、歴史的にもその名が知られている。
津軽打刃物では、地鉄に鋼を付け、鋼をたたいてたたきぬくという作刀技術を培ってきた。刀作りが禁じられた戦後は刃物、特に包丁を作り続けてきた。刀作りで培った精密な加工技術を生かして溶接金物の製作も始め、鉄鋼事業も幅広く展開している。
この二唐国俊の技術を受け継いで包丁作りを行っているのが、現社長の7代目吉澤俊寿さん、8代目吉澤剛さんらである。現在の事業の大半は、鉄鋼事業が占めるようになった。だが、刀匠として日々灼熱(しゃくねつ)の炎と向き合いながら、鉄を打ちぬくという「古来変わらない包丁作りに取り組むことと、最先端の技術を用いた鉄鋼事業が相互に影響を受けあうことの効果は大きい」と剛さんは話す。
これらの技術をベースに、さらに彼らが青森の自然にヒントを得て作り上げたのが、世界でも類を見ない「暗紋」と呼ばれる独自の技法で仕上げられた包丁である。磨き上げられた鋼の上に波紋紋様が広がっている。
これは、世界遺産白神山地の麓、西目屋村にある暗門の滝の波紋からヒントを得てできた模様だ。鋼を25層に重ね、磨き上げ、その層の境目を浮かび上がらせる仕上げを施すことで、「暗門の滝」の波紋のような美しい模様を作り上げている。この美しく神秘的な紋様と確かな技術に裏打ちされた切れ味という機能性が評価され、海外でも欧州を中心に暗紋で仕上げた刃物への支持が少しずつ広がってきている。次世代を担っていく剛さんは暗紋仕上げの広がりを模索しようと、ペーパーナイフなどのシリーズも展開するなど、日々刃物の可能性を追い求めている。
古来からの技術と最新の技術、そして地元ならではの環境から生まれる発想が融合したモノづくりは、確かな方向性の一つを示していると感じた。(「COS KYOTO」代表 北林功/SANKEI EXPRESS)