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【RE-DESIGN ニッポン】金襴の輝き、再び。
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経糸がセットされた織機。ここに緯糸が通され、美しい紋様の金襴生地に仕上げられる=2015年3月10日(提供写真) 西陣を中心に生産される織物の一つに、「金襴(きんらん)」がある。名前の通り、金糸や金箔(きんぱく)をふんだんに用いた絹織物である。豪華なものを指して「まるで金襴緞子のようだ」という比喩で用いられるように、豪奢で華麗なところが特徴だ。「RE-DESIGN ニッポン」の第11回は、西陣の地で金襴を製造する加地金襴を訪ねた。
絹織物は世界各地で作られてきた。シルクロードを通じて伝わり、日本でも3世紀頃には絹織物の生産が始まったとされる。しかし、世界中に見られる絹織物の中で、金箔や銀箔を織り込んでいるのは西陣だけである。以前にも紹介した「引箔」(和紙に漆を塗り、金箔や銀箔を貼り糸状に裁断したもの)は、まさにこのための素材である。その箔素材をふんだんに織り込み、豪華さを演出したものが「金襴」と呼ばれる。和紙、漆、金箔や銀箔のそれぞれに高品質の素材を持つ日本だからこそ花開いた織物と言えるだろう。
今回訪ねた加地金襴は、主に仏教寺院で用いられる金襴生地を製造している。寺院の仏像の周囲を飾る生地や僧侶用の法衣などが主な生産品目である。そのような用途であるため、通常の帯幅である30~35センチではなく70センチほどの広い幅の生地を生産している。「金襴柄には1000種類以上のストックがあります。お客さまの要望に応じてすぐに出せるように、(織るときに必要となる)経糸は常に整理してあります」と、若手女性織師である加藤彩耀さんが説明してくださった。
宗教都市でもある京都の地で、顧客の中心が寺院であるということで比較的安定した需要があった。それでも社会の構造変化は避けられない状況になってきている。
加地金襴では「人口減少もあって、寺院も檀家数が減少する事態になっています。将来のことを踏まえた取り組みをしていかないといけない」と話している。
加地金襴は社員数が17人と業界でも大手に入る。その中でも加藤さんをはじめ若手を採用し、ベテラン職人からの技術継承に積極的に取り組んでいる。加地金襴では「将来を踏まえると、まず技術継承は当たり前のこと」と話しているが、多くの文化産業が苦しんでいるのが、この技術継承なのだ。
そして、加地金襴の強みである豊富な柄のストックと迅速かつ高度な生産力で、仏教関係以外の市場からもさまざまなニーズに応える生地を生産していく取り組みを進めつつある。国内市場で仏教用途以外のテキスタイルとして商品を展開することはもちろん、海外市場を見越した生地の改良などにも取り組み始めている。
西陣の地で生み出され、日本ならではの豪華絢爛な輝きを持つテキスタイル生地が、新たなかたちで世界を彩る日も近い。(「COS KYOTO」代表 北林功/SANKEI EXPRESS)