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日中首脳 5カ月ぶり会談 「融和」演出 関係改善は予断許さず

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日中首脳 5カ月ぶり会談 「融和」演出 関係改善は予断許さず

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会談を前に握手する安倍晋三(しんぞう)首相(左)と中国の習近平国家主席=2015年4月22日、インドネシア・首都ジャカルタ(共同)  安倍晋三首相(60)と中国の習近平国家主席(61)は22日夕(日本時間22日夜)、インドネシアの首都ジャカルタで会談し、戦略的互恵関係の推進により、地域や世界の安定と繁栄に貢献する必要があるとの認識で一致した。会談後、首相は「国際会議の機会を利用して首脳会談を行い、両国関係が発展するよう努力したい」と記者団に述べ、さらなる首脳対話の実現に意欲を示した。

 両首脳の会談は昨年11月に北京で開催されて以来、約5カ月ぶり。首相は3月に日中外相会談や防衛当局の安保対話が実施されているのを踏まえ「日中関係は改善に向かっている」との認識を記者団に示した。会談では、中国が設立を主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)について意見を交わし、首相は組織運営や融資基準の透明性が担保されるよう求めたもようだ。首相は尖閣諸島(沖縄県石垣市)の情勢を踏まえ、偶発的衝突を回避するための「海上連絡メカニズム」の早期運用開始の必要性も伝えたとみられる。首相が今夏に戦後70年談話を発表するのを踏まえ、習氏が歴史認識問題について見解を示した可能性もある。

 両首脳はアジア・アフリカ会議(バンドン会議)60周年記念首脳会議に出席するためジャカルタ入りした。会談に先立つ首脳会議の写真撮影の際に握手した。(共同/SANKEI EXPRESS

 ≪「融和」演出 関係改善は予断許さず≫

 首脳会談が約5カ月ぶりに実現した。日中対立の先鋭化を嫌う米国への訪問を前に首相は春季例大祭などで中国側を刺激しないよう配慮。習氏はAIIB創設メンバーが多数参加する国際舞台で両国の緊張状態を懸念する「世界の目」を意識し両国が歩み寄る形で「融和」を演出した。ただ尖閣諸島や歴史認識問題を背景に、双方が抑止力強化に動く現状は変わらず、関係改善へと進むかは予断を許さない。

 訪米控え柔軟姿勢

 首相は22日、習氏との会談の冒頭で握手を交わし、笑顔を見せた。

 昨年11月以来の会談の流れが決まったのはバンドン会議の首脳会議開催地インドネシアを首相が訪問する前の20日。

 「そこは、こだわらない」。この日、官邸関係者から中国側が日本からの会談申し込みを事実上の実施条件としているとの説明を聞いた首相はこう決断した。どちらが会談をお願いする立場なのかというメンツに頓着しない考えを示した。

 その夜に、首相はBSフジ番組で戦後70年談話に関し、過去の村山富市首相談話が明記した「植民地支配と侵略」「心からのおわび」の文言にこだわらない考えを鮮明にした。

 それでも、日中間の調整は進み、21日夕までには会談は「22日午後に実施」で大筋合意。国内に複雑な対日感情を抱える中国側の意向を踏まえ、日本側は対外的に直前まで情報を伏せた。さらに毎回例大祭に合わせて閣僚数人が靖国を参拝するが、例大祭期間中の22日、閣僚が参拝する姿は見られなかった。

 首相の柔軟姿勢は、28日にバラク・オバマ米大統領(53)との会談を控えていることが大きい。訪米を前に「緊張の緩和に向けた対話努力」(日本政府関係者)を、目に見える形で示す必要に迫られていた。

 70年談話に警戒感

 一方の中国はバンドン会議を「建国間もない中国が主導した外交の原点」(外交筋)と位置付ける。建国の指導者、毛沢東の言葉を多用し強い影響を受ける習氏にとって「毛氏と同様に途上国や新興国の『盟主』として度量ある振る舞いをアピールしたい」(日中外交筋)との強い思いがあったのは間違いない。

 内外から盟主と認められるようになるには、国際金融分野でのAIIBの成功も不可欠。中国の程永華駐日大使は22日に東京都内で講演し、日本参加に関し「日本の役割は大きい。アジアの開発発展を進めるため仲間になろう」と呼び掛けた。

 AIIB創設メンバーに英国やドイツなど計57カ国が加わり、勢いに乗っているように見える中国だが、足元では国内経済は既にかつての輝きを失い、成長は減速傾向にある。

 中国が成長を続けるためには「経済で相互依存関係」(日本財務省幹部)にある日本との関係を停滞させるわけにいかなくなってきているとの事情もあった。中国側の姿勢に関し、日本側は「歴史認識問題という名より、経済という実を取って、ぎりぎりのところで歩み寄ったのだろう」(政府筋)と分析する。

 ただ、日中関係がこのまま好転へと進むかは見通せない。中国が今後、懸念するのは首相が今夏に発表する戦後70年談話の行方だ。首相の20日の70年談話をめぐる発言に関し、中国には「戦争被害国への反省が示されるか」(程大使)との警戒感も強い。

 首相の意向が談話に反映されれば、日中関係が再び冷え込む可能性もある。(SANKEI EXPRESS

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