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政治
【Q&A】官邸ドローン事件 範囲制限・免許制など議論加速
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操縦が簡単で、姿勢も安定しているため、火山の調査などさまざまな用途に利用が広がる小型無人機「ドローン」=2015年3月4日、大阪市(共同) 首相官邸屋上で小型無人機「ドローン」が見つかる事件が起き、容疑者が逮捕されました。政府はドローンの法規制の検討を本格化させています。
Q ドローンとは
A 無線や衛星利用測位システム(GPS)を使い、遠隔操作で飛ばす無人飛行機で、もとは軍事用に開発されました。空撮用カメラを搭載し、複数のプロペラで飛行する「マルチコプター」を中心に、趣味や商業目的での利用が急速に広まっています。家電量販店などで数千~10万円ほどで買えます。
Q 従来のラジオコントロール機との違いは
A 姿勢や高度、速度をコンピューターで制御しており、従来のラジコンヘリなどより操縦が簡単な上、姿勢が安定するため空撮に最適です。あらかじめ経路を設定して目的地まで自動で飛ばせるものや、1キロ以上離れた場所から操縦できるものもあります。
Q 具体的な用途は
A 人が立ち入りにくい場所を飛ばせるため、東京電力福島第1原発周辺での放射線測定に使われ、火山の調査やマラソン大会の警備などにも導入されました。
Q 今後の活用は
A 米国の通販大手アマゾン・コムが商品の配達に使うことを検討しており、日本でも、定期航路が少ない瀬戸内海の離島に食料や医薬品を届ける計画が浮上するなど、物流面での活用が進みそうです。スポーツ中継でも、上空から迫力あるシーンが撮影できると期待されています。
Q どこを飛べるの
A 航空法では模型飛行機と同じ扱いで、航空機の邪魔にならない範囲なら規制はありません。空港周辺を除くと、航空機のルート下は150メートル未満、それ以外は250メートル未満の低空なら届け出なしで飛べます。
Q 勝手に頭の上を飛ばれるのは困る
A 墜落して下にいた人が負傷する事故が起きたほか、マンションの盗撮など悪用の恐れも指摘されています。国土交通省は昨年12月、ドローンのルール作りに向けた検討会を発足させ、今月6日に有識者を交えた会議を初めて開いたところでした。
Q 今回の事件で、規制は厳しくなるの
A 政府は、事件を危機管理上の重大な問題と捉えており、今国会中の法規制を検討する方針を示しました。飛行範囲の制限や操縦者の免許制、購入者の登録制、事故に備えた保険加入の義務付けなど、議論が加速しそうです。
≪上空監視強化 再発防止に全力≫
政府は、重要施設の上空監視を強化し、再発防止に全力を挙げる方針だ。「国家行政機能の中枢」(菅義偉(すが・よしひで)官房長官)における警備の「穴」が明確となった事態に危機感を募らせている。
官邸関係者は「すぐに手を打たないと模倣犯を生みかねない。まずは監視強化だ。その上で、法整備などにより規制を強化する」と述べ、二段構えの対応方針を明らかにした。時間を要する法規制に先行する対策として、官邸屋上などの巡回徹底や監視カメラ増設を挙げた。
自民党の谷垣禎一(さだかず)幹事長は25日、取材に「党として対策を検討する」と強調。二階(にかい)俊博総務会長は東京都内での街頭演説で事件に触れ「不意を突かれた。法律を直ちに準備している」と説明した。
民主党の長妻昭代表代行はTBS番組で「日本の中枢が非常に脆弱(ぜいじゃく)だということが白日の下にさらされた。危機管理体制の全面的見直しを働き掛ける」と述べた。
一方、首相周辺は「できることを進めるが、官邸警備だけを考えても、完璧にこなすのは難しい」と明かす。ドローン使用を過度に規制すれば、技術革新や経済成長を阻害するとの指摘もある。
政府関係者は「『犯人は必ず見つかる』というメッセージを発し、犯行の抑止につなげていくしかない」と語った。(SANKEI EXPRESS)