SankeiBiz for mobile

首相、米議会演説 「希望の同盟へ」 未来志向を前面に

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの政治

首相、米議会演説 「希望の同盟へ」 未来志向を前面に

更新

訪米中の安倍晋三(しんぞう)首相は4月28日、首都ワシントンのホワイトハウスで開かれた公式夕食会で、冗談を交えたスピーチで、昭恵夫人(右)、バラク・オバマ米大統領(中央)らの笑いを誘った=2015年(ロイター)  安倍晋三首相は29日午前(日本時間30日未明)、日本の首相として初めて米議会上下両院合同会議で演説に臨む。演説の題名は「希望の同盟へ」。戦後70年の節目に、敵対国から同盟関係となった日米の「心の紐帯(ちゅうたい)」を訴え、日米同盟の発展が世界の平和と安定に貢献するという「未来志向」の考えを前面に打ち出す。

 安倍首相は日米同盟がテロや感染症、自然災害、気候変動といった地球規模の課題に立ち向かうべき時代だと指摘。アジア太平洋地域で強圧的な海洋進出を図る中国を念頭に「太平洋からインド洋にかけての広い海を、自由で法の支配が貫徹する平和の海にしなければならない」と訴える。同時に、集団的自衛権の行使容認を含む安全保障法制について「同盟はより一層堅固になる。地域の平和のため確かな抑止力をもたらす」と述べ、日本が果たす役割を強調する。

 安倍首相は先の大戦について「戦後の日本は痛切な反省を胸に歩みを刻んだ。アジア諸国民に苦しみを与えた事実から目を背けてはならない」と言及。ただ、韓国が戦後70年の安倍首相談話に執拗(しつよう)に求める「侵略」「植民地支配」「お詫び」の文言は使用しない。(ワシントン 峯匡孝/SANKEI EXPRESS

 ≪祖父、岸信介元首相の言葉引く≫

 安倍晋三首相の今回の訪米の「キーワード」は、祖父、岸信介(のぶすけ)元首相だった。

 安倍首相は米上下両院合同会議での演説冒頭、58年前に同じく米下院で演説した岸元首相の言葉を引きこう述べる。

 「日本が、世界の自由主義国と提携しているのも、民主主義の原則と理想を確信しているからです」

 一方、その安倍首相を歓待したオバマ米大統領も、首相と岸元首相を何度も重ね合わせた。

 「1957年、晋三氏の祖父、岸首相は米議会で演説をした。岸氏は『日米新時代』のドアを開けた。明日、孫の安倍首相がそのパートナーシップをさらに一歩前に進める。関係を強化する新しい石を刻む」

 オバマ氏は28日夜(日本時間29日午前)、安倍首相を招いたホワイトハウスでの公式夕食会でこうたたえ、首相の地元、山口県の地酒で乾杯した。2年前の2月訪米時の昼食会では、オバマ氏の手元にある飲み物はミネラルウオーターだけだった。両首脳の距離がいかに近づいたかが分かる。

 オバマ氏にとって安倍首相はすでに世界戦略上、不可欠な存在となった。歴史認識をめぐり反日攻勢で共闘する韓国や中国の言い分よりも、安倍首相の「未来志向」の同盟関係を優先させたい意向とみられる。

 「韓国の歴史主張は病的でうんざりだ」

 首相周辺が今月上旬、訪米して米有識者らと意見交換した際、複数の相手がこうあきれていたという。

 そもそも岸氏は米議会演説で、「戦前・戦中」に一切言及していない。韓国が執拗に安倍首相の戦後70年談話に求める「侵略」「植民地支配」などの文言も当然ない。戦後わずか12年しかたっていないにもかかわらずだ。

 岸氏は演説を「日本を含め新たに生まれた民主主義国家」と「戦後」から始め、「国際共産主義の挑戦を受けているアジアで有効にして建設的な役割を果たす」と決意を示した。この演説で岸氏は何度も拍手を浴び、今でも「米議会で高い評価を得た」(外務省関係者)と語られている。

 「今回の米議会演説では、基本的に昨年7月のオーストラリア議会での演説の路線でいく」

 安倍首相は米国への出発前、周囲にこう語っていた。豪州議会演説で首相は外務省が作った当初案にあった「謝罪」を外し、豪州の戦争犠牲者に深い哀悼の誠をささげることで、豪州議員らから喝采を受けた。

 今回の米議会演説でも、アジアや米国の犠牲者に対する反省や心からの哀悼の念を示すにとどめる。大切なのは定型句ではなく、理念であり共感を呼ぶ思いであるからだ。

 これまで安倍首相は、「歴史修正主義者」とのレッテル貼りを受けてきた。オバマ氏やその周囲も、安倍政権発足当初はそうした見方に影響され、首相に警戒心を隠さなかった。だが、そうした疑念は徐々に薄れつつある。

 安倍首相は今回の訪米中でもワシントンで、ナチス・ドイツによるユダヤ人大量虐殺を展示するホロコースト記念博物館を視察した。今夏発表する戦後70年談話を見据え、一貫して平和を願ってきた姿勢を改めて強調し、こうした懸念を払拭したいからだ。

 この際、記者団に「悲劇も善意の勇気も風化させず記憶にとどめ、日本として世界の平和と安定のため積極的に貢献しなければならない」と強調した。歴史を直視していることを訴えつつ、あくまで未来志向でいくという2つの意味を込めたメッセージだ。(ワシントン 峯匡孝/SANKEI EXPRESS

ランキング