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無印良品が「MUJI BOOKS」を生んだ 田中一光さんの面影を本に託して 松岡正剛

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無印良品が「MUJI BOOKS」を生んだ 田中一光さんの面影を本に託して 松岡正剛

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【BOOKWARE】編集工学研究所所長、イシス編集学校校長の松岡正剛さん=9月14日、東京都千代田区の「丸善丸の内店内の松丸本舗」(大山実撮影)  【BOOKWARE】

 【さ】 福岡住吉地区に大型複合商業施設キャナルシティ博多がある。その3階・4階に無印良品があって、以前から杉本貴志さんの斬新なインテリアツールなどが話題になっていた。その無印良品がさる3月5日に全面リニューアルオープンし、同時にその一角に「MUJI BOOKS」が開店した。編集工学研究所が選書と棚組みと構成を引き受けた。

 無印良品はいまは亡き田中一光さんのコンセプトが生きている、世界でもめずらしい製販一貫の生活用品ショップだ。青山に1号店が出た80年代半ばのことをいまでも思い出すが、これはやられたと兜を脱いだ。

 【し】一光さんに「あれ、参りました」と言ったらニッコリ笑っていた。店舗デザインにはすでにスーパーポテトが加わっていたし、開店時の「わけあって、安い」というコピーは小池一子さんが作った。みんな一光軍団だった。その「あっぱれ」ぶりに対して、2003年、審査員の磯崎新やアンドレア・ブランジや石井幹子と企んで「織部賞」をさしあげたことがある。

 無印良品は当初こそ西友のプライベートブランドだったが、その後はファミリーマートも加わって、いまは金井政明さんのもとで良品計画が全容を展開し、国内で約400店舗、海外で約300店舗が運営されている。

 【す】 その無印良品が本屋さんを併設しようというのである。ぼくのチームが引き受けることになったのだが、さあ、どうするか。短期間の取り組みだったが、どこか無印良品っぽくて、かつ思い切った「本のセレクトショップ」になるように試みた。

 【せ】 出来ぐあいは行ってみてもらうしかないが、たとえば「さしすせそ」という5つのクラスター棚を、「冊・食・素・生活・装」に振って棚組みをしたりした。また、「くらし美人」と名付けて清少納言から伊藤まさこまで展開した棚や、真っ白い本ばかりを集めた一角もつくった。見出しサインのデザインは美柑和俊君に頼んでライフ感覚に近づけた。

 【そ】 本を選びながら珈琲が飲めるし、レトルトカレー売場や子供用品の売場にも本がごっそり出張して、そこの無印良品とまじりあうようになっている。子供たちが坐りこんで絵本に見入っているのは、嬉しい光景だった。イシス編集学校の九州支部「九天玄氣組」の諸君にも手伝ってもらい、ワークショップも催している。

 「本のセレクトショップ」はあるようで、ない。まして生活用品と本がごそっと一緒に売られている店は初めてだろう。枕とポシェットと松の実を買った客が、そこに3冊の本を加えているのは、悪くない。まさにブックウェアがライフスタイルと共存しはじめたのだ。

 ■まつおか・せいごう 編集工学研究所所長・イシス編集学校校長。古今東西の600万冊の書物を収蔵する「図書街」という構想を長年あたためている。2009~12年、丸善本店に伝説の書店「松丸本舗」を出現させ、その後も帝京大学、近畿大学他様々な団体と図書空間の改革に励む。

webサイト「松岡正剛千夜千冊」 http://1000ya.isis.ne.jp/

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