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【クレモンティーヌのパリ便り】大事なのは「他人を思いやる心」

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【クレモンティーヌのパリ便り】大事なのは「他人を思いやる心」

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最近お気に入りのカフェ・プーシュキン。お店の人も感じが良くて、何を食べてもおいしいんです。スイーツが絶品です!=アラブ首長国連邦・首都アブダビ(クレモンティーヌさん提供)  皆さん お元気ですか?

 私はこの間の週末に仕事でアブダビに行ったんですよ。

 アブダビのパンがすごくおいしいこと、春なのに日中40度以上の炎熱だから昼間街に人がいないことなどなど、文化や習慣の違いは脳の刺激になるし、異文化に触れることは人生を豊かにしてくれます。まるで映画のワンシーンのように夕方になるとどこからともなく人の波がやってくるんです。太陽が大好きな私たちフランス人も2日目から日中の外出は控えることにしたほどの暑さでした。世界一美しいといわれるモスクは圧巻、中東ならではの金市場では目がくらくらするほど、どこを見ても金、また金! 目の保養をさせていただきました。

 人が襲われたのに

 アブダビから帰った土曜の午後、サンジェルマンデプレに今年の冬にできたばかりのカフェ・プーシュキン(Cafe Pouchkine)でおいの誕生日をお祝いしました。このカフェ、パリでは珍しいロシアのお菓子とピロシキやボルシチなどがいただける今話題のお店です。

 食事が終わってお店を出た時に事件が起こりました。道の反対側にある某高級宝飾店から出てきた紳士がブラスナックルを持った男に襲われたのです。彼は大量の血を流し地面に倒れ込みましたが、周りにいた人たちは誰一人として紳士を助けようとしなかったのです。おいのディランと息子のディエゴと娘のソリータ、子供たちの父親のノノが急いで紳士の元に駆けつけ、ソリータが警察を呼び、男性たちは襲った犯人を追いかけました。事件に気付いた他の若者が彼らに続きます。男性たちは何とか犯人を捕まえ地面に倒したところで、警察が到着し無事に犯人を逮捕し、意識を失った紳士は救急車で病院に運ばれ一命を取り留めました。何もかも一瞬の出来事でしたが、問題は某高級宝飾店には常時2人の警備員がいますが、事件を見て見ぬふりをしてお店から出てこなかったことです。

 「ようこそ、パリへ!」。この場にいた観光客の皆さんはまたパリに来たいと思うでしょうか? 世界一の観光都市パリ! 倒れている人を見て何かしようと思わない人の神経がわかりません。個人主義? エゴイズム? 巻き込まれたくないという気持ちが無関心につながるのでしょうね。

 ちなみにアブダビの旅では一度もいやな思いをすることはありませんでした。

 宗教や文化や人種が違っても、人間としての基本は「他人を思いやる心」です。

 私が時々フランス人をやめたくなる(やめられませんが)のは、「謝らない」「関わらない」の2つの面を目の当たりにする時です。

 これからパリは一年で一番美しい季節を迎えます。仕事や旅行でパリにいらっしゃる皆さん、くれぐれも気をつけてくださいね。

 Paris est super!!

 S’il n’y a pas de Parisiens.(パリジャンはさておき、パリは最高よ!)

 ■Clementine パリ生まれ。レコードコレクターの父親の影響でジャズに囲まれて育つ。1988年に歌手デビューし、92年から日本で活動を本格化。2010年、「天才バカボン」の主題歌をはじめ、日本のアニメソングをフランス語でカバーした「アニメンティーヌ」がヒット。音楽だけでなく、オンオフを自然体で実践するライフスタイルも注目を浴びている。最新アルバムは「クレモンティーヌ・シングス・ディズニー」。possion-h.com/cle/

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