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【クレモンティーヌのパリ便り】若者、子供から学ぶ
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DEPA_RYO_with_CLEMENTINEとしてコラボレーション・ライブを行うクレモンティーヌさん(右)=2013年10月14日(提供写真) みなさん、お元気ですか?
世界は混沌(こんとん)としていくばかりです。わが家ではかつてないほど「討論」の時間を長く持つようになりました。今まで何となくやり過ごしていた日常が、いとおしい時間に変化したと言ってもいいのかもしれません。
また、これはわが家だけのことではありませんが、多くの家庭や学校で大人たちが子供や若者たちの意見に耳を傾けるようになったように思います。
理由は簡単です。彼らこそが未来であり、これからの社会を作っていくのですから、大人として彼らと真剣に接することがいかに大切かを痛感したからだと思います。
昨夜のディナーは「愛」と言うとてつもない大きなテーマについて話し合いました。15歳の息子が「愛は愛されることからじゃなくて、愛することから始まる」と言うと、娘は「どんなに愛しても愛されないこともある。マリリン・モンローのように子供の頃両親の愛に触れることができなかった人は、愛し方を知らないんだと思う」と反論します。
確かに子供には環境を選ぶことはできません。幼児期に虐待や差別などを受けた経験は、その後の人間形成に大きな影響を与えることは言うまでもありません。
だからこそ「地域社会」が必要なのだと思います。私の子供の頃は近所の怖いおばさんがいたり、学校帰りにいつも挨拶するおじいさんがいたり、しっかりした「地域社会」が存在しました。それがどんどん「関わらない」ことが一番だとする風潮に変化し、近年ではアパートの隣人との付き合いさえしなくなってしまいました。
あまりにも進んでしまった希薄な人間関係に危機を感じた政府が、数年前から毎年5月の最終火曜の夕方に「La fete des voisins」(隣人パーティー)というイベントを始めました。夕方から何となくアパートの住人が集まってアペリティフ(食前酒)を楽しむだけなのですが、これがみんなが思った以上に効果があり、今では世界各国でも同じイベントが行われるようになりました。
同じように1982年にスタートした地域の誰もが音楽家になれる「La fete de la musique」(音楽のお祭り)は今では世界110カ国で開催される世界最大級の音楽イベントになりました。自分と違う意見や文化を持った人を知り、尊重することも大きな意味での「愛」なのではないでしょうか?
戦後世界は「経済」を何よりも重視してきました。もちろん生きていくために「お金」は必要ですから、「経済」を否定するつもりはありません。ただ、それに重きを置きすぎることで生じる格差や社会のゆがみは、大きくなっていくばかりのような気がします。
若者や子供は可能性の塊です。私も今回新しい試みをすることにしたんですよ。それは21日に東京で行われるコンサートです。
共演するのは、今回アルバムに「流れ星のワルツ」という曲を提供してくれたピアニストで、2年前に友人の紹介でパリの自宅に遊びに来て一心にピアノを弾いていた園田涼くんと、数年前にアルバムを聴いてから興味があったインストゥルメンタルユニット、DEPAPEPEの三浦拓也くんです。才能あふれる30歳前後の若いアーティストとコンサートを開きます。
最新アルバムで斬新なアレンジをしてくれたジュリアン・リボーもどちらかといえば娘に近い年代です。若者の感性はいつも私を驚かせてくれます。同年代の同業界の人とばかりつき合っていると、許容範囲の狭いつまらない人間になってしまいますよ!!
Sans amour on ne peut pas vivre! (愛がなくちゃ、生きていけないわ)