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トップダンサー集結 愛と感動紡ぐ 舞台「*ASTERISK 女神の光」
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キッズダンサーHIKARUが転校先の高校でクラスメートと意気投合しダンスを踊るシーン。左から4人目が主演のKoharu_Sugawara=2015年5月8日、東京都千代田区丸の内・東京国際フォーラム(田中幸美撮影) 「ママ、ごめんね。ありがとう。あなたは私に絶望と希望をくれました。だからあなたは私の女神」
20組49人の日本人トップダンサーが集結し、それぞれのスタイルのダンスによって1つの物語を紡ぐ異色の舞台「*ASTERISK(アスタリスク)女神の光」が10日まで、東京都千代田区の東京国際フォーラムで行われている。
一昨年に始まり3回目となる公演は今回、ステージママと娘のキッズダンサーの愛と葛藤がテーマ。退廃的なのに思わず笑ってしまう奇天烈ワールドを展開し、強力なカリスマ性を放つダンスカンパニー「東京ゲゲゲイ」の主宰、MIKEY(マイキー)こと牧宗孝さん(32)が総合演出と振り付け・脚本を手がけた。
牧さんがPVやツアーの振り付けを担当し、「マイキーが表現したいことは痛いほどわかってしまう」と牧さんに絶大な信頼を寄せるシンガー・ソングライターの加藤ミリヤがテーマソングを書き下ろした。
主役のキッズダンサーには、今最も注目される若手ダンサー、Koharu Sugawaraさん(23)、ステージママ役に多彩な舞台表現者である原田薫さん。さらに昨年の公演で主役を務めた仲宗根梨乃(りの)さん(35)、世界一のダンスカンパニーの異名を取り圧倒的な実力と人気を誇る「s**t kingz(シットキングス)」、男子新体操とダンスを融合させた新境地を切り開く「BLUE TOKYO(ブルートーキョー)」など豪華メンバーが出演する。
アスタリスクは、星とも呼ばれ、かけ算を示す記号。舞台「アスタリスク」は、さまざまなダンサーによるかけ算によって生み出されるともいえる。
≪運命の先の生き方は選択できる≫
ダンスの舞台公演「アスタリスク」で総合演出と脚本を手がける牧宗孝さんは、加藤ミリヤのPVやツアーの振り付けのほか、MISHAの振り付け・演出・バックダンサーなどとして活躍するカリスマ表現者だ。
牧さんは「ダンサーが集まった舞台だったのでダンスがそのままステージになるようなものにしたかった」と話す。確かに劇中のオーディションシーンなどは、今まさに目の前でオーディションが行われているのではないかと錯覚してしまうほど。
物語は英才教育を受けるキッズダンサー、HIKARUとステージママ、KAORUの愛憎劇だ。これはダンスシーンに限ったことでなく、学歴重視の社会や家業の継承などにもいえることで、牧さんは「自分の選択を越えた運命だけど、その先どう生きていくかは選択できるというメッセージを伝えたかった」と話す。
また、20代半ばにゲイであることをカミングアウトした牧さんは、思春期には自分だけ周りと違うと感じていたという。そして、「自分はお母さんの理想になれないかもしれない」という気持ちを持っていた。舞台の中で「うまくダンスが踊れなくてもありのままの私を愛してほしい」という主人公の悲痛な叫びは、「ゲイであってもありのまま愛してほしい」という自身の気持ちの表れかもしれないと話した。
舞台では音楽に特にこだわったという。劇中約20曲が流れるが、加藤ミリヤの書き下ろし以外はすべてオリジナルだ。牧さんは昨年から100曲以上を作曲。歌手がいないので、演奏だけのインストゥルメンタルになるのをなるべく避け、仲宗根梨乃さんが歌ったり、少年のダンスチーム「HATABOY」がラップをしたりとダンサーと一緒に音を作り上げた。
さらに今回、ダンサーとしては出演せず演出に徹したことについて、「ダンス界の中で一番好きな人たちを集めたので私の分身になって踊ってくれる」と満足そうに話した。
その分身1号ともいうべき主役のKoharuさんは、「マイキーさん(牧さんの愛称)は、私に衝撃を与えた憧れの人」と話す。10歳でダンスを始め各種ダンスコンテストに優勝するなど主人公HIKARUとほぼ同じ生い立ちをたどった。唯一違うのは「自分が(ダンスを)やりたいからやってきた」こと。
アスタリスクがダンス公演でありながら、セリフがあり演技が要求されることについては「主人公が自然に体の中に入った」という。物語自体はハッピーエンドではない。「でもそこはマイキーさんワールドで、ズドンと落として全部終わらせるのでなく、おもしろく仕立てている。本当に尊敬します。私はマイキーさんのためにも、お母さんのためにも踊ります」。子猫のような目が輝いた。(田中幸美(さちみ)、写真も/SANKEI EXPRESS)