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維新代表に松野氏 改憲では与党と協調 4分裂? 野党再編「草刈り場」にも
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維新の党の新代表に決まり、記者会見後に江田憲司前代表(右)と握手を交わす松野頼久氏=2015年5月19日午後、国会(共同) 維新の党は19日、国会内で両院議員総会を開き、「大阪都構想」の住民投票否決を受けて代表を辞任した江田憲司氏(59)の後任に松野頼久幹事長(54)を選出した。任期は今年9月まで。後任の新幹事長には柿沢未途(みと)氏(44)を起用した。
松野氏は記者会見で、党の路線について「今まで通り是々非々だ。『何でも反対』の野党をつくるつもりはない」と述べ、憲法改正などでは与党と協調する考えを示した。
松野氏は党創設者の橋下(はしもと)徹最高顧問(大阪市長)の政界引退表明で存続の危機に直面した党運営のかじ取りを担う。両院議員総会では「一致団結し、この難局を乗り切りたい」と党の結束を呼び掛けた。
記者会見では「橋下、江田両氏の志を継ぎ、改革政党としてがんばる」と強調。後半国会最大の焦点となる安全保障関連法案への対応については「政府から丁寧な審議をやろうというのが伝わらない。充実した審議を求めたい」と述べ、対決姿勢をにじませた。
また、松野氏は2月の党大会で「改革勢力を結集し政権交代を目指す」と決議したことを挙げ、「しかるべき時期に野党再編をやっていく時期が来る」と強調。民主党なども交えた将来的な野党再編に意欲を示した。
出身母体が異なる維新議員の中で、民主党出身の松野氏は橋下氏の直系に当たる大阪選出議員や、江田氏ら旧結(ゆ)いの党出身議員の信頼が厚く、両院議員総会では満場一致で選出された。
≪4分裂? 野党再編「草刈り場」にも≫
大黒柱を失うことになった野党第二党は、党の結束を保てるのか。「大阪都構想」という看板政策が否定された維新の党は19日、松野新代表の下で再出発を図ることになった。ただ党所属議員は、出身政党でほぼ同数の4つの勢力に大別され、微妙なバランスの上に成り立っている。松野氏は「是々非々」路線の継承を表明したが、かじ取りを誤れば“4分裂”で他党の草刈り場となる危険をはらんでいる。
「党が割れるようなことは絶対にないと約束してもらいたい」
松野氏は19日の両院議員総会でこう訴えた。新代表がいきなり結束を呼び掛けたのは、逆に言えば、現在の維新が分裂の可能性を秘めていることを示している。
満場一致の選出とはいえ、松野氏には注文もついた。大阪選出の議員は総会で、都構想否決で橋下最高顧問(大阪市長)と江田前代表が「引責」する中、幹事長の松野氏が代表に「昇格」することに「地元では疑問の声もある」とぶつけた。
維新は議員51人のうち、民主系、大阪系、結い系がそれぞれ12人、自民党などその他の出身が15人と、4つの勢力が同規模で存在する。これまでは橋下氏の意向を受けた大阪系の存在感が大きかった。だが、都構想否決の衝撃は大きく、「しばらくおとなしくしておいた方がいい」(党幹部)との声が大勢だ。
一方、大阪系議員には、リベラル色が強い民主系や結い系への警戒感も渦巻く。ある大阪系議員は「維新精神を失った党運営は許されない」とし、野党再編優先で憲法改正や集団的自衛権の行使容認といった「本来の維新らしさ」を保つよう求める。
一方、民主党の岡田克也代表(61)は元同僚の松野代表就任を歓迎。記者団に「野党が一致して巨大与党に立ち向かう必要性は増している」と共闘に意欲を示した。共闘の先にある野党再編についても、民主党内には「『自民か非自民か』という形で第二極をつくっていくことに維新も参加してもらいたい」(安住淳(あずみ・じゅん)国対委員長代理)と、民主党主導で維新を吸収すべきだとの意見が多い。
ただ、維新の衆院議員40人のうち松野氏ら29人は比例代表選出で、民主党に移籍することはできない。そのため維新内には「民主党を解体し、両者で新党を結成すべきだ」(中堅)との声も出ている。(内藤慎二/SANKEI EXPRESS)