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GDP年率2.4%増 景気回復裏付け 1~3月期

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GDP年率2.4%増 景気回復裏付け 1~3月期

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百貨店プランタン銀座内に4月にオープンしたニトリの新店舗=2015年、東京都中央区(共同)  2期連続プラス

 内閣府が20日発表した1~3月期の国内総生産(GDP、季節調整値)速報値は、物価変動を除く実質で前期比0.6%増、このペースが1年間続くと仮定した年率換算では2.4%増で、2四半期連続のプラスとなった。昨年4月の消費税増税後の落ち込みから、景気が緩やかな回復基調にあることを示した。ただ、個人消費の持ち直しは依然鈍く、内需の改善は力強さを欠いている。

 専門家の間では日本経済が緩やかに回復を続けるとの予想が大勢を占める。一方、米国など海外経済の鈍化が続くとの見方もあり、輸出減を通じて国内景気の波乱要因になる恐れがある。SMBC日興証券の渡辺浩志シニアエコノミストは、GDPを押し上げた主因が企業の在庫増だったことなどから個人消費が「まだ弱い」とみている。

 同時に発表された2014年度の実質GDPは前年度比1.0%減で、5年ぶりのマイナス成長となり、政府の経済見通し(0.5%減)も下回った。

 1~3月期の個人消費は前期比0.4%増と3四半期連続のプラスだった。テレビなど家電製品や携帯電話が堅調だった一方、パソコンや衣料品などは振るわなかった。

 設備投資上向く

 設備投資は0.4%増と4四半期ぶりに増加し、増税後で初めてプラスに転じた。ただ、企業収益の拡大に比べて伸び率は小幅にとどまっており、企業の慎重姿勢が根強いことがうかがえる。

 民間の住宅投資も増税の影響が薄れたことで1.8%増と4四半期ぶりのプラスに転じた。公共投資は1.4%減。

 輸出は2.4%増、輸入も2.9%増だった。統計上、輸出に含まれる訪日外国人客による百貨店などでの購入増加も寄与した。

 景気実感に近いとされる名目GDPは、前期比1.9%増だった。年率換算で7.7%増となり、11年7~9月期以来の高い伸び率となった。14年度の名目GDPは前年度比1.4%増。

 ≪消費二極化 頼みは賃上げ、夏のボーナス≫

 1~3月期のGDPは緩やかな景気回復基調を維持した。しかし、物価高などで家計の警戒感は依然として根強い。訪日外国人客の「爆買い」や、富裕層の高額品購入は旺盛な一方、中低所得層は慎重姿勢が残り、消費現場は二極化しつつある。アベノミクスの成長戦略も目玉政策に乏しく、政権内には手詰まり感が漂う。

 政府と現場に落差

 20日のGDP発表を受け、続伸で始まった東京株式市場の平均株価は約15年1カ月ぶりの高値を記録した。「この道しかないという思いで経済政策を進めたことが認められてきている」。菅義偉(すが・よしひで)官房長官は記者会見で胸を張った。

 だが、政府の認識と消費現場との落差は否めない。百貨店で中国などからの訪日客で潤ったのは大都市の店舗に限られ、地方店は苦戦が続く。大丸と松坂屋を運営するJ.フロントリテイリングの山本良一社長は「地方経済は活性化していない」と指摘する。

 株高効果で宝飾品などは好調だが「富裕層以外の消費は伸び悩んでいる」(三越伊勢丹ホールディングスの大西洋社長)。内閣府によると、1~3月期の百貨店やスーパーなど小売店の販売額は前期比2.1%減とマイナスに沈んだ。

 4月には、東京・銀座の百貨店「プランタン銀座」に集客が見込める家具量販店ニトリの店舗がオープン。業界もてこ入れに懸命だ。

 国内の自動車販売も落ち込みが続き、中でも地方での需要が強い軽自動車は不振だ。都市部に比べて景気回復が遅れていることが買い控えを誘った。4月からは軽自動車税の増税も加わり、スズキの鈴木修会長兼社長は「消費者心理を冷やしている」と嘆く。

 頼みは賃上げや夏のボーナス増加だが、大企業から中小企業への広がりは見通せない。消費の回復遅れから、企業の設備投資も鈍いままだ。

 漏れる弱気の声

 「企業収益は過去最高で、原資はある。こういう時に攻めの経営をやらずして、いつやるのか」。甘利明(あまり・あきら)経済再生担当相は20日の会見で、設備投資の動きが鈍いことへのいら立ちをにじませた。

 安保法案の成立に突き進む安倍晋三首相にとって、経済再生は「政権の生命線」(官邸筋)。だが、新たな成長戦略の議論は低調だ。法人税減税や雇用・農業改革が焦点となった昨年とは様変わりで「民間頼み」(政府筋)の空気も漂う。

 甘利氏は「企業の背中を押す」と設備投資の促進策を検討する構えだが、政府内からは早くも「即効性のある対策はない」(経済官庁幹部)と弱気の声が漏れている。(SANKEI EXPRESS

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