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ドローン飛行予告、15歳少年逮捕 浅草・三社祭妨害容疑

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ドローン飛行予告、15歳少年逮捕 浅草・三社祭妨害容疑

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御開帳の法要行事中の善光寺境内で15歳の少年が飛ばして落下した小型無人機「ドローン」(右下)=2015年5月9日、長野県長野市(見物客提供)  小型無人機「ドローン」の飛行をインターネット上で示唆し、浅草神社(東京都台東区)の三社祭の運営を妨害したとして、警視庁少年事件課は21日、威力業務妨害容疑で、横浜市の無職の少年(15)を逮捕した。

 少年事件課によると「ドローンを飛ばすとは一言もいっていない」と容疑を否認している。少年は9日、御開帳の法要行事中の善光寺(長野市)でドローンを飛行させ、その様子をネット中継中に墜落させていた。

 逮捕容疑は14日深夜~15日未明、自宅で動画配信サイト「afreeca(アフリカ)TV」に、「浅草で祭りがあるみたいなんですよ。行きますから。撮影禁止なんて書いてないからね」などと、ドローンの飛行を示唆する動画を配信。三社祭を主催する「浅草神社奉賛会」に警備を強化させ、業務を妨害したとしている。

 少年の配信した動画を見た女性が浅草署に通報して発覚した。浅草神社奉賛会はドローンが飛行した場合の墜落事故を防ぐため、会場用の張り紙を作成し「ドローンの持ち込みと飛行を禁止する」と呼びかけるなどして警備を強化。19日には浅草署に威力業務妨害容疑で被害届を提出していた。

 少年は5月、善光寺のほかに京都市の東本願寺(1日)、兵庫県姫路市の姫路城(3日)でもドローンを飛行させ、各府県警が注意。14、15日には国会議事堂近くでドローンを飛ばそうとするなどして、警視庁に5回、注意を受けていた。

 少年はネット配信サイトに動画を多数投稿。2月には川崎市の中1殺害事件で逮捕された少年の自宅を中継するなど、トラブルを繰り返していた。動画サイトは、閲覧者が投稿者に現金化できるアイテムを送信できる仕組み。少年も動画配信で収入を得ていたといい、少年事件課は動機との関連を調べる。

 ≪「動画収入で生計」 悪質な行為誘発≫

 警視庁に威力業務妨害容疑で逮捕された少年は、自身のホームページで「ノエル」と名乗り、「15歳で配信業やってます」と自己紹介。ドローンを飛ばしたり、警察から職務質問されたりする様子を生中継するなどしていた。過去に警察批判をしていた少年は、逮捕後の取り調べでも「答えるつもりはありません」と話しているという。

 再三注意に反省なし

 善光寺での墜落騒動を起こした5日後の今月14日。少年は国会議事堂近くで生中継しながらドローンを飛ばそうとして、警視庁の警察官と押し問答になった。「やめろ」と言いながら警察官の顔が映るようにカメラを動かし、その後ツイッターで「こうじまちけいさつしょはかなり横暴です」「不当な拘束をされた」などと警察を批判した。

 「ドローンを飛ばすこと自体は問題ない。ただ墜落してけが人を出すことは許されない」。再三の注意を受けながら反省の色を見せない少年に、多くの警視庁幹部が危機感を募らせていた。今回の逮捕は、こういった経緯から悪質性が高いと判断された結果だった。

 ネット投稿に絡んでは、警視庁が今年1月、スーパーで菓子につまようじを差し入れる動画を投稿したとして、東京都三鷹市の少年を偽計業務妨害容疑などで逮捕した。視聴回数を稼ぐためとみられる投稿は、少年少女を中心に相次いでいる。

 警視庁は「いたずらでは許されない」と危機感を強め、悪質な行為については今後も立件する方針だ。

 今回逮捕された少年らをこうした行為に走らせた裏には「ユーチューバー」や「生主(なまぬし)」と呼ばれる存在がちらつく。動画投稿サイト「ユーチューブ」「ニコニコ動画」に動画をアップし、報酬を得ている人々のことだ。

 2億円稼いだ例も

 ウェブニュース編集者の上田裕資氏は「動画投稿サイトの運営会社は投稿者が投稿した映像とともにスポンサーのCMを流し、広告収入を得る。その収入の一部が投稿者に支払われる仕組みだ。ユーチューブでは動画再生1回当たり、0.1円が投稿者の手に渡る」と解説する。

 ニコニコ動画では閲覧者が多いほど1回の再生に対して発生する金額が大きくなる。「日本人で動画で最も稼いでいるのは、現在タレントとしても活躍するHIKAKIN氏。ユーチューブで得た金額は2億円近いとされている」(上田氏)

 業界事情に詳しいライターの鈴木將義(まさよし)氏は少年の心境について、「ニコ動発の“派生ビジネス”を狙ったのではないか。先日もニコ動で活動していたカラオケのユニットが人気を呼び、ライブ告知を行ったところ、3万円のチケットが売り切れたと話題になった。この少年も積極的に名前を売ることで、IT関係の文化人枠に収まろうと考えたのかもしれない」と分析する。

 4月には「ネットアイドル」を自称する30代の無職の男が、都内の交番で踊る様子を投稿。建造物侵入容疑で警視庁に逮捕された。1月には香川県高松市に住む20代の男が通行人に「お年玉をカップに入れてください」などと、金銭を請う物ごい行為をネット中継。翌月、香川県警に軽犯罪法違反容疑で書類送検された(後に不起訴)。

 ITジャーナリストの井上トシユキ氏は「動画サイトの収入だけで生活できる勝ち組はごく一部。視聴者の気を引こうと騒動を起こしても、好意的に見る向きは少ない」と指摘する。

 運営側にとっても、世間から不正に手を貸しているとみられかねないため、ドローン少年が動画を投稿するたびアカウント(ネットサービスにログインする権利)を削除していた。「配信業で生計を立てる」はずだったこの少年。本末転倒とはこのことだ。(SANKEI EXPRESS

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