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【まぜこぜエクスプレス】Vol.52 「LGBT初級講座」刊行 松中権さん

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【まぜこぜエクスプレス】Vol.52 「LGBT初級講座」刊行 松中権さん

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著書「LGBT初級講座_まずは、ゲイの友だちをつくりなさい」を持つゴンちゃんこと松中権さん(右)と、一般社団法人「Get_in_touch」理事長の東ちづる=2015年5月16日(tobojiさん撮影、取材協力:カラフルステーション)  ≪人と違うことは超ラッキーなこと≫

 ゴンちゃんこと松中権さんは、金沢市生まれの39歳。一橋大学を卒業し、メルボルン大学に留学した経験がある。広告代理店の電通に勤務しながら、「LGBTと、いろんな人と、いっしょに」を合言葉に、セクシュアリティーを超えてすべての人が自分らしく年齢を重ねていける社会づくりを目指す認定NPO法人「グッド・エイジング・エールズ」の代表や、音楽とアートを通じて地球規模の課題解決に取り組む一般社団法人「mudef」の理事も務めている。そんな多忙なゴンちゃんの著書『LGBT初級講座 まずは、ゲイの友だちをつくりなさい』(講談社+α新書)が5月20日に刊行された。

 「往生際が悪かった」

 誰も排除しない「まぜこぜの社会」をコンセプトにしているGet in touchの活動では、LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)の当事者たちと交流する機会も多い。そこではとにかく、「ゴンさんのアイデアです」「ゴンちゃんのおかげなんです」と頻繁にその名前を耳にする。多くの人たちからリスペクトされているゴンちゃんだが、いつもほんわかした空気をまとっている。

 丸メガネに帽子、ちょうネクタイやチェックのジャケットという、かわいい系スタイリッシュでおちゃめないでたち。「ゲイにオシャレな人が多い」というのは確かに本当だなと思う。

 そんなゴンちゃんの著書は、タイトルからして斬新。面白そうだ。もちろん、その予想は裏切られない。当事者たちにとっては初級かもしれないが、非当事者からすると「そうだったのか!」の大波小波。「アライ」と呼ばれるLGBT支援者である私も、目からウロコが、ハラリハラリだった。

 ただ、私はちょっと誤解していた。みんなのリーダーとして活動してきたゴンちゃんは、アイデンティティーやカミングアウトについてさほど苦悩してこなかったのではないかと思っていた。先頃、ゲイをカミングアウトしたアップルのCEO、ティム・クック氏の「I’m proud to be gay(ゲイであることに誇りを持っている)」という言葉のごとく、ゴンちゃんも順風満帆な人生をおくるスーパーマンならぬスーパーゲイだと。

 とんでもなかった。ゴンちゃんにはゴンちゃんの人知れぬ苦悩と苦労の歴史があったことが、本を読んでわかった。恋愛の悩み、ゲイである自分を認めカミングアウトするまでの道のり…。傷つき傷つけたりもして。

 「LGBTの中でも、特にゲイやレズビアンのカミングアウトはなかなか広がらない」と、ゴンちゃんは言う。「メリットがないかもしれないと思われがち。僕はカミングアウトして自分らしく働けるようになった。カミングアウトすることでポテンシャルが上がると思っているけど、それは経験してみないとわからない」と振り返る。

 著書に、なかなかゲイであることが受け入れられず「往生際が悪かった自分」のことを書いたのは、「自分の経験が、悩める後輩たちの役に立つかもしれない」と思ったからだという。

 ゴンちゃん自身が悩みながら会得してきた、知恵やアイデア、ネットワーク力はスーパーすごい! ユニーク!

 「LGBTの話はセクシュアリティーの話だけだと思われがちだけど、結局コミュニケーションの話や、人と人との関係づくりの話なんです。LGBTであることでつまずきもするし、いろんなことに直面し苦しむけど、それを乗り越える経験も増えてくる。結果的にたくさんの経験を積むことができるんです」

 ヒントが満載

 この本には、セクシュアリティーに関係なく人はみんな違う、それっておもしろい、自分らしく生き抜いていいんだ、と気力がムクムクになるヒントが満載だ。もちろんゲイの友だちをつくる醍醐味(だいごみ)もギッシリ詰まっている。

 「これまでLGBTの人たちは、なかなか家族をもてなかったり、既存のコミュニティーにうまく参加できなかったりしたことから、横のつながり、斜めのつながりをつくってきたという歴史があるんです。今の日本で孤立している人は他にもたくさんいて、LGBTに限ったことではない。LGBTがつくってきたコミュニティーには、今後の街づくりや社会づくりに生かしていけるヒントがあるかもしれない」とゴンちゃんは考えているという。

 生きづらさを感じている人はもちろん、ゲイ・オカマ・オネエがごっちゃになっている人、LGBTを趣味嗜好(しこう)だといまだに勘違いしている人にもぜひ読んでほしい。スピーディーな文章なので、さほどお時間も取らせません。(一般社団法人「Get in touch」代表 東ちづる/SANKEI EXPRESS

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