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【勿忘草】家族でなくても

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの社会

【勿忘草】家族でなくても

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 お年寄りばかりの島の集落に、夏になると子供の楽しげな声が響く。おじいちゃん、おばあちゃんと孫ほどの年齢差だが、血縁はない。集落が、事情があって親と暮らしていない児童養護施設の子供を招いているのだ。

 宮城県石巻市の沖合にある網地島(あじしま)の網地浜地区は、約140人がほぼ高齢者。子供は一人もおらず、学校も廃校になった。夏休みには親子連れが遊びに来る。「あんな幸せそうな親子ばかりではない。そういう子供を招こう」と「網地島ふるさと楽好(がっこう)」を始めたのが、桶谷(おけや)敦さん(74)たちだった。

 楽好で、子供たちは廃校になった学校に寝泊まりし、島伝統の魚釣り「アナゴ抜き」をしたり、豊富にとれるウニやアワビを食べたりする。いなかのおじいちゃん、おばあちゃんの家に遊びに行ったかのように、楽しい夏の思い出を作る。

 事情を抱える子供たちのプライバシーを守るため、積極的に広報活動はしていなかった。しかし、その活動は口コミで広がり、社会活動関係の多くの賞を受賞している。そのひとつの授賞式で、桶谷さんに会った。

 桶谷さんと話していて印象深かったのは、楽好に来た子供たちの事情を詮索したりしないということ。説教でも同情でもない、普通のおじいちゃん、おばあちゃんと孫との関係。そんな関係を島の人が当たり前に築き、子供たちの心をほぐした。

 最初は楽好に反対していたおじいちゃんも、「体がきつい」とグチをこぼすおばあちゃんも、何だかんだ言いながら楽好の手伝いに集まってくる。こんな世話焼きの光景もいい。

 東日本大震災で、島は甚大な被害を受けた。そのときも1年かけて黙々と砂浜のがれきを片付け、楽好を再開した。自分のことだけで手いっぱいだったときに、子供のために行動した。

 「幸せな経験を少しでもしてもらいたい。将来、自分の家庭をもったときに戸惑わないように」。桶谷さんは静かに話した。今から夏の受け入れの準備を進めている。

 親の愛を感じられずに苦しむ子供は多い。家族に根ざす問題もなくならない。でも、血がつながっていなくても、何の見返りも求めず、こんなに思ってくれている人がいる。人はそれだけで生きていける。(小川記代子/SANKEI EXPRESS

 

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