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問われるのは「人間の不思議さ、面白さ」 深作健太、真田佑馬 舞台「TABU タブー -シーラッハ『禁忌』より-」

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問われるのは「人間の不思議さ、面白さ」 深作健太、真田佑馬 舞台「TABU タブー -シーラッハ『禁忌』より-」

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 ドイツの人気作家、フェルディナント・フォン・シーラッハによる新作ミステリーを舞台化した「TABU タブー -シーラッハ『禁忌』より-」が東京で公演中だ。若手写真家が誘拐殺人の疑いで逮捕され、法廷で意外な事実が明らかになっていく。欧州の貴族文化を背景に緑、赤、青の光の三原色が引きつける舞台。問われるのは「人間の不思議さ、面白さ」だと演出の深作健太(42)と主演の真田佑馬(22)は言う。

 「TABU」は2013年にドイツで出版され、日本では今年1月に翻訳「禁忌」(酒寄進一訳、東京創元社)が発売された。名家出身の若手写真家、ゼバスティアン(真田)が若い女性を誘拐したとして逮捕され、捜査官の強要で殺害を自供。恋人、ゾフィア(大空祐飛)ら周囲の証言をもとに、弁護士、ビーグラー(橋爪功)が法廷に立つ。果たして彼は有罪か無罪か。上演台本は木内宏昌。

 歴史の積み重ね背景に

 シーラッハは名門の家系に生まれ、刑事事件の弁護士としても活躍、その人生観が作品の土台となっている。橋爪はシーラッハのファンで複数の短編を朗読劇として公演。作品の魅力を「無駄のない文章の裏に熱いものがあり、深いところまで人間を掘り下げている」とみる。

 深作は橋爪の朗読公演を演出しており、今回の作品では英語圏とドイツ語圏のミステリーの違い、日本とドイツの共通項を掘り下げる。「英語圏の演劇は叙情的、ドイツ語圏は叙事的で人間を探求していく文化がある。また終戦後、米国との関係で民主主義を積んだ日本と、東西分断からEU統合に至ったドイツは似ているようで違う。その歴史の積み重ねを背景にしたシーラッハの自画像が、ゼバスティアンとビーグラーに投影されている」

 ゼバスティアンには多面的で曖昧な人間の姿が映し出される。「描かれるのは人間についてのミステリー。同じ人間が殺人を犯したのかと思えば恋人と普通に暮らしている。その不思議さがテーマであり魅力」と深作は言う。

 舞台は過去を緑、事件は赤、裁判は青という光の三原色を主題に展開される。三原色のはざまにあるはずの「淡い色」が見えない人間の曖昧さを感じさせる。

 難しいけれど魅力的

 ジャニーズJr.の真田は初のストレートプレー主演。「難しいけれど魅力的な作品。人間は正解がないから面白い。人によってゼバスティアン像は違い、僕にも共感できる部分とそうでない部分がある。お客さまは見る前と後で百パーセント、イメージが変わる。『人間とは何か』のメッセージを受け取り、昇華していただく舞台になる」

 真田は同世代のゼバスティアンの内面を掘り下げ、等身大で理解しようとする。「僕はバブル崩壊後に生まれた『ゆとり世代』。これまでは背伸びして分かったふりをしていた部分もあった。でも人を掘り下げるときに嘘になってはいけない」と身を引き締める。

 真田の存在をきっかけに演劇ファンの裾野を広げたい。そのために深作は、今後もジャンルや国籍などの垣根を越えた作品を紹介していきたいという。「島国の日本は排他的になりがち。海の向こうとも混じり合わないと凝り固まってしまう」との危機感も強い。

 6月14日まで東京・新国立劇場。問い合わせはサンライズプロモーション東京、(電)0570・00・3337。兵庫公演あり。(文:藤沢志穂子/撮影:野村成次/SANKEI EXPRESS

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