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【18歳選挙権】道半ばの主権者教育 自民が警戒感 教員の政治的中立確保へ法改正検討

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【18歳選挙権】道半ばの主権者教育 自民が警戒感 教員の政治的中立確保へ法改正検討

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選挙権年齢を18歳以上に引き下げる改正公選法が成立し、模擬投票する高校生=2015年6月17日午後、国会(共同)  選挙権年齢を18歳以上に引き下げる改正公選法の成立を受け、自民党は「教員の政治的中立性を担保する」として関連法改正の検討を始めた。「18歳選挙権」の初舞台となる公算が大きい来夏の参院選に向け、若者の政治参加を促す主権者教育が急務だが、学校現場では「偏向教育」との批判を恐れ、授業内容を自主規制する動きも広がる。“若き1票”に魂を吹き込む実践は、道半ばだ。

 非公開

 神奈川県教育委員会は2010年から、約150の全公立高校で参院選の際に模擬選挙に取り組んでいる。「社会とかかわる力」を育てる主権者教育の一環で、実際の選挙期間中に、各党の政策を比較して望ましい政策を自主的に判断し、候補者名や政党名を用紙に記入して1票を投じる。

 ただ、この模擬選挙には多くの制約がある。政党のマニフェストの一部を抜粋した比較資料の作成は禁じられ、政策がもたらす影響を生徒に聞かれても「価値判断を含むコメントは一切禁止」。万が一、投票結果に関する情報公開請求があった場合、県教委は非公開として対応するとしている。投票結果は学校外に漏れないよう、生徒には口頭か板書に限って伝える。

 自己防衛

 模擬選挙を経験した神奈川県の高校教諭は「選挙の争点を示して議論を促すこともできなければ、生徒が意見をぶつけ合うこともできなかった」と振り返る。争点の提示は論点の取捨選択につながるとして、教員の価値判断を禁じた県教委の内規に抵触するため、授業では生徒同士が討論する事前学習は断念。選挙公報を配り、参院選の制度を説明するだけの中身の薄い教育実践になってしまった。

 県教委の過敏な対応について教諭は「内規は保護者や政党からクレームを受けないための自己防衛だろう」と推測する。

 埼玉県の高校の模擬選挙でも、教諭が生徒の要望で各党のポスターを廊下に張り出そうとしたところ、教頭からストップがかかった。国旗国歌に関する教科書記述をめぐり、県議が「偏っている」と教育現場を批判する報道があった後で、教諭は学校側の自主規制だと感じた。「特定の政党支持の生徒が選挙活動を始めるかもしれない」。教頭の説明は、首をひねりたくなるものだった。

 偏向に反発

 教育基本法は、学校の場で特定政党のための政治教育を禁じている。保守系政治家からは「日教組などが偏向的な教育をしている」との反発も根強く、教育関係者は「これまで学校では政治課題があまり扱われてこなかった」と指摘する。

 改正公選法成立を機に現状を変えようと、文部科学省は解禁されたネット選挙運動の注意点や、公選法の解説をまとめた副教材を秋にも全ての高校生に配布する。争点や政策比較ができるワークシートも盛り込む予定だ。

 ただ、主権者教育の広がりを牽制(けんせい)するかのように、自民党内には「教員の政治的中立性を担保する施策が必要」との意見が強まる。公立学校の教員による政治活動を制限する教育公務員特例法への罰則の創設と同時に、特定政党の支持を児童生徒に仕向けるよう労働組合などの組織が教員に働き掛けるのを禁じた臨時措置法を、小中学校以外に高校にも拡大する法改正を検討している。

 模擬選挙に取り組む公民の教諭は「極論すれば何もしないのが中立なのか。原発でも自衛隊でも、旬の情報を提供して議論を促すのが主権者教育には欠かせないはずだ」と危ぶんでいる。

 ≪当初は人口比1.1% 女性は戦後≫

 「18歳以上」への引き下げが決まった選挙権の歴史は、1889年の衆院議員選挙法制定から始まった。最初に選挙権を得たのは一定の財産を持つ25歳以上の男性に限られ、人口比はわずか1.1%。男性有権者は要件となった納税額の段階的引き下げで対象が徐々に広がったが、女性が選挙権を獲得したのは第二次大戦後だった。法制定当初は、直接国税の納付額15円以上を条件とした。改正で1900年には10円以上、19年には3円以上へと緩和されたが、有権者の対人口比はそれぞれ2.2%、5.5%にとどまった。

 大正デモクラシーの高まりで25年、納税要件が撤廃されて男性の普通選挙が実現すると、有権者は人口の20.0%まで増えた。婦人参政権運動が活発になったものの、この年制定の治安維持法で政治活動が制限された事情もあり、実現しないまま戦後を迎えた。(SANKEI EXPRESS

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