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深い愛 天国からも夫を導く 佐藤浩市、樋口可南子 映画「愛を積むひと」

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深い愛 天国からも夫を導く 佐藤浩市、樋口可南子 映画「愛を積むひと」

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インタビューに応じる佐藤浩市さんと樋口可南子(かなこ)さん=2015年4月22日、東京都港区(宮崎瑞穂撮影)  「夫婦円満の秘訣(ひけつ)ってあるものでしょうか?」-。酸いも甘いもかみ分けたベテラン俳優、佐藤浩市(54)に単刀直入な質問をぶつけてみた。すると「そんな当たり前のこと」といわんばかりに、いっそ投げやり気味なニュアンスさえにじませ、自信たっぷりの回答が返ってきた。

 距離感が大事

 「それなら僕はもう発見していますよ。結局、何だかんだ言ったって、主導権は嫁が握っているんです。人前では一歩下がって夫を立ててくれる。でも、裏では、きっちり手綱を握っていて、夫を意のままに操作している。そういう関係がうまく成立していれば、きっとそれが夫婦にとって一番よい形であり、夫婦仲が長く続くことにもつながるのかもしれません。偉そうに言ってますが、うちも主導権は全部、妻にあります」

 一方、身を乗り出して佐藤の話に耳を傾けていた樋口可南子(かなこ、56)は、自らの体験を踏まえ、夫婦円満となる、とっておきのアプローチ法を披露してくれた。「年齢によって夫婦円満の秘訣は変わってきますね。若いころ、私は主人の趣味に合わせていましたが、年齢を重ねた今では、無理に合わせてはいません。例えば、夫がテレビの野球中継を見ているとき。私はまったく面白くないから、自分専用のテレビを買ってしまうとかですね。付かず離れずといった距離感が大事かな。ただ、毎日、夫と一緒に食事するようにはしています。お話しする機会を持つことは大切だと思うんですよね」

 そんな佐藤と樋口は、新作映画「愛を積むひと」(朝倉雄三監督)で、北海道の大自然を舞台に第2の人生をスタートさせたおしどり夫婦を情感たっぷりに演じた。本作はエドワード・ムーニー・Jr.の小説「石を積むひと」をベースに、朝倉監督が舞台を米国から北海道に移して脚本を練り上げた重厚なヒューマンドラマだ。

 「余命」の受け止め方

 《余生を楽しく過ごそうと、篤史(佐藤)と妻の良子(樋口)は思い切って長年経営してきた東京の町工場をたたんだ後、北海道へ移住し、かつて外国人が暮らしていたオシャレな一軒家で暮らし始めた。野菜作りやガーデニング、家の内装のアレンジなどに精を出す良子とは対照的に、仕事一筋だった篤史は暇を持て余すばかり。そんな篤史を見かねた良子は家の周囲に石塀を作るよう頼んだ。しかし、心臓病を患っていた良子は症状を悪化させて急逝する。すっかり生きる気力を失ってしまった篤史だが、タンスの引き出しの中に、自分に宛てた良子の手紙が残されていることに気づく。》

 本作は、若者ならばあまり考えることもないであろう「余命」を宣告された後の過ごし方について、真剣に考えるきっかけを与えてくれる。余命が幾ばくもないことを知っていた良子の場合、篤史に対し、医師から余命を告げられたことを必死に隠し通しながら、篤史に伝えきれなかった思い、アドバイス、お願いを記しておいた。長年連れ添った妻が遺した手紙が篤史に与えた影響は破壊的に大きなものとなった。良子の強い思いに動かされた篤史は、ある事情で疎遠となってしまった娘(北川景子)や現地で仲違いした人間たちとの関係修復に動き始める。

 自分にとってかけがえのない人物が余命を宣告されたとしたら-。慎重に言葉を選びながら、自分に言い聞かせるかのように、佐藤は心構えを語った。「受け止め方は、30代、40代、50代…とそのときの自分の年代によって随分と違うでしょう。自分自身が人生全般で積み重ねてきた経験値がそれぞれの世代で違うからです。僕はまだ壮年だけれど、これからの人生を考えたとき、一番大切な人を失ったときの喪失感というのは、若いときに越えていくものとは全然違うくらい大きなものになっていくのだろうと思う。今後、そういった問題により一層多く出くわすことになるでしょう。この映画を通して、そういう意味でも自分と向き合っていくことができました」

 樋口の場合はどうか? 「もし私が良子だったら、すぐに夫に『私が死んじゃったらどうする? ねえ、どうする?』という感じで、聞いちゃいますよね。良子にはすごみを感じますよ。一見、何もかも完璧にこなす、よくできた奥さんにしか見えないのですが、実はまるで違う。庭仕事をする篤史を窓越しに見ながら、キッチンで平然と“遺書”を書きあげてしまう良子の姿を思うと、私はゾッとします。私はこの良子のすごみに魅力を感じて、何としてもこの役を演じてみたいと思ったんですよ」。いつも撮影現場で周囲を和ませてくれる陽気な樋口らしい返事が返ってきた。

 人は許せるのか

 「どうすれば人を許せるのか?」も本作が提示したもう1つの大きなテーマだ。樋口のスタンスはなかなか示唆に富んだものだった。「そもそも人を恨むことが苦手なんですよね。恨むという行為は、自分の中に悪いエネルギーを残してしまう気がします。それでは自分が損してしまいます。むしろ、相手を『かわいそう』と思った方が、自分からいい気が出てくる感じがするんですよ。『失礼ね』『なにこの人!』と感じて、相手を恨みそうになったら、まずは『かわいそうね』と考えて、歯止めをかけるようにしています」

 逆に佐藤は、実父でもある名優、三國連太郎との確執報道を念頭に、野太いだみ声を絞り出し、ユーモアたっぷりに樋口を“挑発”してみせた。「僕は人を恨んでずーっと生きてきたんです。恨みつらみしかありません。わら人形を何個作ったことか…。でも、僕みたいに狭小な人間だからこそ、篤史の思いについて大きくイメージを膨らませることができたのかもしれないですよね。つまり、その思いとは、篤史が良子の死期を早めてしまったかもしれないある青年を許す心理のことですが。僕自身の中でも考えるべきテーマとしてだんだんと大きくなっていきました。そして、その答えは天国から『妻』が教えてくれた。僕は人を恨んで生きてきた人間だからこそ、篤史としてうまくそこに帰結できたのだと思うのですが…」。6月20日、全国公開。(文:高橋天地(たかくに)/撮影:宮崎瑞穂/SANKEI EXPRESS

 ■さとう・こういち 1960年12月10日、東京都生まれ。主な映画出演作は、94年「忠臣蔵外伝 四谷怪談」(日本アカデミー賞最優秀主演男優賞受賞)、2008年「ザ・マジックアワー」、10年「最後の忠臣蔵」、11年「大鹿村騒動記」、12年「あなたへ」「のぼうの城」、13年「許されざる者」「人類資金」「清須会議」など。父は俳優の三國連太郎(1923~2013年)。 

 ■ひぐち・かなこ 1958年12月13日、新潟県生まれ。80年「戒厳令の夜」で映画初出演。91年「陽炎」「四万十川」で日本アカデミー賞優秀主演女優賞に輝く。2002年「阿弥陀堂だより」、06年「明日の記憶」でいずれも日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞。他に08年「アキレスと亀」など。テレビでは、11年「おひさま」(NHK)で日本放送映画藝術大賞優秀助演女優賞を受賞。

 ※【メディアトリガーplus】マークがある写真にアプリ「メディアトリガーplus」をインストールしたスマホをかざすと、関連する動画を視聴できます(本日の内容は6日間有効です<2015年6月24日まで>)。アプリは「App Store」「Google Playストア」からダウンロードできます(無料)。詳しい使い方はアプリ内の「オプション」→「ヘルプ」をご覧ください。参考記事「メディアトリガーplusを使ってみよう 紙面連動アプリが変わります」

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