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戦後70年の今年に重く響く る・ばる 舞台「蜜柑とユウウツ-茨木のり子異聞-」
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演劇ユニット「る・ばる」の新作「蜜柑とユウウツ-茨木のり子異聞-」=2015年6月3日(提供写真) 松金よね子、岡本麗、田岡美也子のベテラン女優3人による演劇ユニット「る・ばる」5年ぶりの新作。9年前に死去した、詩人の茨木のり子の人生に光を当てた。戦争へのやるせない思いをうたった「わたしが一番きれいだったとき」などで知られる生前の日々をつづる形で、長田育恵が脚本を書き下ろした。茨木の凛とした詩の世界と人生が、行間とともに迫ってくる舞台となっている。
茨木の死から4カ月、自宅においと編集者が未発表の原稿を探しに来る。その様子を生前の茨木が現世に残した「気掛かり」(松金)と、同日に死んだ2人の「のりこ」(岡本と田岡)が見守る。終戦から詩を書き始めるまでの思い、一番の理解者だった夫との出会いと死別、一人で生きた30年あまりの日々を3人のやり取りでつづっていく。共演に木野花ほか、演出はマキノノゾミ。
茨木を題材に推薦したのは松金で、死後に発表された、亡夫への思いをつづった詩集「歳月」にほれ込んだため。だが茨木の人生はそう劇的ではなく、ドラマには仕立てにくい。故人の生前を知る関係者も多いだけに、特定の女優が演じると、偏ったイメージがつきかねない。試行錯誤の末、松金ら3人のやり取りで表現する形となったという。
「主人公3人」の展開が散漫に見える印象もなくはない。ただ「自分の目で見て耳で聞いて、自分の足で立ちたい」という茨木のメッセージは力強い。「今の時代は目の前のことに忙殺され、過去を顧みずに流されてしまいがち。戦後70年の今年に重く響く」とマキノ。6月21日まで、東京芸術劇場シアターイースト。地方公演あり。(藤沢志穂子/SANKEI EXPRESS)