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セピア色の世界と現実のギャップ表現 濱田めぐみ、柿澤勇人 舞台「サンセット大通り」
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劇団四季では、夜中も稽古場で自主練習をしていたという濱田めぐみ(左)と柿澤勇人(はやと)。「辞めてその場所がなくなったことがショックだった」と苦笑い=2015年6月16日、東京都墨田区(長尾みなみ撮影) サイレント映画時代の大女優が、若手脚本家と対峙(たいじ)して起きる悲劇を描いたミュージカル「サンセット大通り」に、濱田めぐみ(42)と柿澤勇人(はやと、27)が主演する。
日本では3年ぶりの再演で、ともに劇団四季出身の2人は今回が初参加。愛憎入り交じる心理劇を昔の時間が止まったままの豪邸で展開。セピア色の世界と現実との「ギャップを表現したい」と話す。
原作は1950年公開の米映画で、名匠ビリー・ワイルダーが監督・脚本を手がけ、大女優ノーマをグロリア・スワンソン、脚本家ジョーをウィリアム・ホールデンがそれぞれ演じた。
ミュージカル版はアンドリュー・ロイド・ウェッバーにより93年にロンドンで初演、94年には米ブロードウェーで上演され、95年のトニー賞で作品賞など7部門を獲得した。今回の再演は主演のノーマとジョーに濱田と柿澤、安蘭(あらん)けいと平方元基(ひらかた・げんき)のダブルキャストで演出は鈴木裕美。
映画はフィルム・ノワール(犯罪映画)の名作とされ、ミュージカル版も広く知られる。それだけに「イメージを壊さないよう、日本版として、かなりの集中力を持ってお届けしないと納得していただけない」と濱田は身を引き締める。
ノーマは現実に目をつぶって過去の名声に執着、ジョーへの屈折した愛と妄想から破滅に至る「女優なら誰もがやりたい役」とも言われる。「ただ、同じ女優でも自分とはあまりに違いすぎる。究極の状況に置かれた人間が、取られたら死んでしまうほど執着しているものを、取られた瞬間の絶望や悲しみをたぐり寄せたい」と濱田。
モチーフとするのは隔離された豪邸の古いかび臭い空気と、外の現実の世界とのずれを出すこと。「曲の持つエネルギーやボリュームが普通のミュージカルより大きいので難しい。シビアに当たってます」
濱田と柿澤は劇団四季の先輩と後輩の間柄で、最近ではミュージカル「デスノート」で共演するなど気心の知れた仲。柿澤も「歌が難しい。変拍子が多くて。アンドリュー(・ロイド・ウェッバー)が意地悪してくるんですよ」と苦笑い。寸暇を惜しんでピアノを弾き、歌を稽古している。
ジョーには現実の世界と豪邸での出来事を橋渡しする、ストーリーテラーの役割もある。野心から近づいたノーマに引き寄せられていく一方、女性脚本家ベティ(夢咲ねね)との恋に落ちるなど心情は複雑だ。
「分かりやすい三角関係ではないし、歌と説明の切り替えも難しい。日本版ではノーマに赤ちゃんのような純粋さが垣間見えて放っておけない。同情や哀れが愛に変わるのかどうか。映画のホールデンはぴったりだけど、僕は当時の彼より若い。変に老け役にせずできることをやりたい」
2人とも今の自分があるのは「劇団四季で鍛えられたおかげ」と感謝する。柿澤は村上春樹原作・蜷川幸雄演出「海辺のカフカ」ロンドン公演に参加、高い評価を得た。一方「いつか(戯曲『奇跡の人』の)アニー・サリバンをやりたい」という濱田は「舞台は自分に戻れる生活の場所。海外の芸術を仕入れて発展させ、日本のレベルを上げていきたい」と話す。
7月4~20日。東京・赤坂ACTシアター。問い合わせはホリプロチケットセンター(電)03・3490・4949。地方公演あり。(藤沢志穂子/SANKEI EXPRESS)