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「なりたいものになれる」米国の夢体現 米バレエ団、黒人女性初のプリンシパル
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アメリカン・バレエ・シアターの「ロミオとジュリエット」の舞台で踊るミスティ・コープランドさん=2015年6月15日(AP) 世界最高峰のバレエ団の一つでニューヨークに本拠を置く「アメリカン・バレエ・シアター」(ABT)に、75年の歴史の中で初めて黒人女性のプリンシパル(首席ダンサー)が誕生した。ミスティ・コープランドさん(32)。貧しい家庭で育ち、トウシューズが買えずソックスをはいて学校のバスケットボールのコートで踊っているところを見いだされ、スターへの階段を駆け上がった。「自分がなりたいものになれる」という信念を貫き、まさにアメリカンドリームを体現してみせた。
「アフリカ系米国人の私が、プリンシパルに選ばれたことを本当に光栄に思います。(バレエを始めた)13歳からの夢でした」
コープランドさんは6月30日にニューヨークで開いた会見でこう喜びを語った。ABTはこの日、コープランドさんを8月1日付でソリストからプリンシパルに昇格させると発表した。
現在上演中の「白鳥の湖」で、オデット(白鳥)とオディール(黒鳥)の2役を演じているが、「本当にすばらしい褐色の白鳥よ」と胸を張った。
ロイター通信や米ABCニュース(電子版)などによると、コープランドさんは中西部ミズーリ州カンザスシティーで生まれ、カリフォルニア州のロサンゼルスで育った。4度の結婚歴のある母親には彼女も含め6人の子供がおり、モーテルを転々とする生活を送っていたという。
11歳の時に聴いた米人気歌手マライア・キャリーさん(45)の曲でダンスに目覚め、13歳でバレエを独学で始めた。お金がなかったため、スポーツ用のソックスをはき、学校のバスケットボールのコートで踊っている所をたまたまバレエ講師が目撃。その才能にほれ込んだ講師の手ほどきを受け、奨学金を得て正式にバレエを学び、憧れのABTを目指す。
周囲のエリートに比べると、バレエを始めた年齢は遅く、「黒人のうえに、筋肉質で身長(157センチ)も低いし、バストも大きすぎる」と悲観したこともあった。それでも夢を諦めず、1997年にロスで最高のバレエダンサーに選ばれ、2001年にABTに入団。07年からソリストを務めている。
「その演技はいつも、観客を熱狂させ、舞台は大スケールのイベントと化す」(米紙ニューヨーク・タイムズ電子版)と、彼女の評価は絶大だ。
米タイム誌が4月に発表した「世界で最も影響力のある100人」にも選ばれ、その代表として4月号の表紙を飾った。この時のインタビューで、「バレリーナは白人でなくても、すごく痩せてなくてもかまわない。それがABTが私を通して示そうとしていることなの」と話しており、今回のプリンシパル昇格でそれが実証された。
そして、「米国では夢がかない、努力と周囲の支えによって自分がなりたいと望んだものになれることも示しているの」と語っていた。
彼女の存在は、「黒人初」という米国でお決まりの人種問題とは別次元にあり、米専門誌ダンスマガジンの元編集長、ウェンディ・ペロン氏はAP通信に「彼女が世界の目をバレエに向けさせるだろう。われわれはこの時が来るのを待っていた」と称賛した。
「長い旅は始まったばかりですから」。彼女もこう言い切った。(SANKEI EXPRESS)