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拉致再調査1年 北が報告延期連絡 「被害者死亡」偽装 次は遺骨偽造か

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拉致再調査1年 北が報告延期連絡 「被害者死亡」偽装 次は遺骨偽造か

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安倍晋三(しんぞう)首相(左)が、北朝鮮から報告延期の連絡があったことを明らかにした7月3日の衆院平和安全法制特別委員会=2015年(斎藤良雄撮影)  安倍晋三首相は3日の衆院平和安全法制特別委員会で、北朝鮮から拉致被害者らの再調査に関し「包括的調査を誠実に行っているが、今しばらく時間がかかる」と報告延期の連絡があったことを明らかにした。首相は3日、岸田文雄外相と山谷(やまたに)えり子拉致問題担当相に北朝鮮への働き掛けを強化するよう指示した。

 北朝鮮は調査期間について「1年程度が目標」としてきた。4日で調査開始から1年となるが、北朝鮮は2日夜に北京の大使館ルートを通じ延期を伝達してきた。首相は衆院平和安全法制特別委で「調査開始から1年が経過する今も拉致被害者の帰国が実現していないことは誠に遺憾だ」と述べた。政府は3日、「遺憾だ。迅速な調査を通じ、すべての問題の解決を求める」とのメッセージを北京の大使館ルートで北朝鮮側に伝えた。

 政府は北朝鮮と月に1、2回程度の非公式協議を行っているが、北朝鮮側が拉致被害者の生存情報を欠いた初回報告を打診し、日本側が拒否する状況が続いている。政府高官は北朝鮮が主張する報告期限について「夏の終わりから秋の初め」とみている。

 自民党は、北朝鮮に対する制裁の再発動や強化を求める要請書を首相に提出したが、政府は「制裁強化は対話の扉を閉じてしまう可能性がある」(政府高官)として制裁強化を当面、見送る方針だ。菅義偉(すが・よしひで)官房長官は3日の記者会見で、北朝鮮の報告延期に「いつまでも引き延ばすわけにはいかない」と述べた。

 ≪「被害者死亡」偽装 次は遺骨偽造か≫

 北朝鮮は2002年9月の日朝首脳会談で、「死亡した」と説明した拉致被害者に関し、さまざまな偽装“工作”を繰り返してきた。水害などで流失したと主張して「遺骨はない」という不可解な説明のほか、被害者のものとする遺骨を提示し、日本政府に偽物と見破られたこともあった。北朝鮮が「遺骨偽造」の研究を進めているという情報もある。被害者に関する有力な生存情報を持つ日本側は今回の再調査でも、北朝鮮側の動向に警戒を強める。

 別人の体液など混入

 6月16日に開かれた超党派の拉致議連総会。外務省の伊原純一アジア大洋州局長に向かって横田めぐみさん(50)=拉致当時(13)=の母、早紀江さん(79)はこう訴えた。

 「『これがあなた方の子供たち(被害者)の遺骨です』といって、持ってこられても私たちは絶対に受け取りません。そんなもの持って帰らないでください」。拉致被害者らの再調査から1年となり、報告期限ともされる7月4日を前に、被害者家族の緊張感は高まっていた。

 その背景には、拉致被害者の支援組織「救う会」が入手した情報がある。北朝鮮が最近、高温で焼いてDNA型鑑定が困難になった骨に、別人の体液などを混入し、別人の遺骨に偽造するという実験を進めているというのだ。

 実験が成功しているとすれば、北朝鮮は“拉致被害者の遺骨”の偽造が可能だということになる。

 北朝鮮はこれまで、日朝首脳会談で「死亡した」と説明した8人について、主張の裏付けとなる“物証”の提示や説明を繰り返してきた。

 02年9月末に平壌を訪問した政府調査団に対し、北朝鮮側は6人について「遺骨はない」と主張。理由は「遺骨は大洪水による土砂崩れで流失」「豪雨でダムの堤防が壊れ、墓が流された」-など、いずれも災害で流失したとの内容だった。

 この訪問の際、松木薫さん(62)=拉致当時(26)=に関しては、北朝鮮側が「本人のものと思われる骨」を出してきた。その人骨は2度にわたって焼かれ、さらにハンマーのようなもので粉々に砕かれていた。DNA型鑑定は困難とされたが、残っていた顎の骨の一部を鑑定した結果、別人のものと判明した。

 顎の骨の破片なくす

 さらに、2年後の日朝実務者協議では、松木さんのものとする「遺骨」に加え、横田めぐみさんのものとする「遺骨」も提示。「火葬した」という説明だったが、通常の火葬時よりかなり高温の1200度の火で焼かれ、顎の骨の破片もなかった。02年の偽遺骨から、“教訓”を得たことは明白だった。

 DNA型の検出を困難にし、鑑定不能とすることで、被害者が「死亡した」と印象づけようとする北朝鮮の意図がうかがえたが、日本側は約1カ月をかけてDNA型鑑定を進め、別人の骨であることを確認した。

 北朝鮮の過去の行動からすれば、再び被害者のものと称した遺骨を偽造してくる恐れはある。

 救う会が北朝鮮の遺骨偽造研究情報を明らかにしたのも、北朝鮮のそうした動きを牽制(けんせい)するためだ。再調査開始から1年となる現在、北朝鮮の対日“情報戦”は激しくなっている。(SANKEI EXPRESS

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