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「新国立」参院審議 五輪相、計画維持を強調 スポーツ界も異論 「本望ではない」

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「新国立」参院審議 五輪相、計画維持を強調 スポーツ界も異論 「本望ではない」

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参院内閣委・文科委連合審査会で民主党の蓮舫(れんほう)代表代行の質問に答える遠藤利明五輪相。左後ろは下村博文(しもむら・はくぶん)文科相=2015年7月14日午前、国会・参院第1委員会室(酒巻俊介撮影)  2020年東京五輪・パラリンピックのメーン会場となる新国立競技場(東京都新宿区)の総工費が2520億円に膨らんだことについて14日、与野党から批判が相次いだ。

 自民党総務会では「高過ぎる」「(政府は)財政再建を唱える一方で、いかがなものか」などの声が続出。参院の委員会審議で、遠藤利明五輪相(65)らは釈明に追われたが、建設は計画通りに進めると強調した。

 二階(にかい)俊博総務会長(76)は総務会後の記者会見で「(報道各社の)世論調査を見ても国民の大半が疑問を持っており、重大な関心を示さざるを得ない」と指摘。公明党の山口那津男(なつお)代表(63)も会見で、政府に「説明責任を尽くしてほしい」と求めた。

 菅義偉(すが・よしひで)官房長官(66)は「国民への説明が十分でなかった部分がある。できるだけ負担が生じないよう、運営の民間委託など工夫をする」と語った。

 参院内閣、文教科学両委員会の連合審査会で、遠藤五輪相は、総工費が基本設計段階の1625億円から大幅に増えたことについて「費用は相当かさんでいる。経緯を国民に丁寧に説明することが不可欠だ」と述べたが、計画見直しには否定的な姿勢を崩さなかった。

 下村博文(しもむら・はくぶん)文部科学相(61)は「選手にも心配を掛け、心を痛めている」と答弁。また19年のラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会で使う計画を見直し、設計変更の時間を稼ぐべきだとの指摘に対しては「W杯主会場の変更は国際スポーツ界の信頼を損なう」と述べた。

 参考人として出席した日本スポーツ振興センター(JSC)の河野(こうの)一郎理事長(68)は、開会式に備え競技場の2本の巨大なアーチ構造に機材をつり下げるための増強工事に約3億円が必要と説明。質問に立った民主党の蓮舫(れんほう)代表代行(47)は「開会式の演出も決まっていないのに、予算が水ぶくれしている」と批判した。

 新国立競技場のデザインの採用を決めた審査委員会で委員長を務めた建築家の安藤忠雄氏(73)は、16日にも東京都内で記者会見する方向で調整している。関係者によると、安藤氏が会見を希望しているという。

 ≪スポーツ界も異論 「本望ではない」≫

 新国立競技場の建設問題が14日の参院内閣、文教科学両委員会の連合審査会で審議され、総工費が2520億円にも膨張した経緯などに批判が集中した。政府側は計画の見直しは困難と繰り返したが説明には疑問が残り、スポーツ界や与党からも異論が相次ぎ、混乱は広がる一方だ。

 薄かった危機感

 「デザインを全く新しいものに変えると完成まで61カ月かかる。今月から起算すると20年7月末まで。これでは(同年7月開幕の)東京五輪にも間に合わなくなるリスクがある」。下村博文(しもむら・はくぶん)文部科学相は審議で、2本の巨大なアーチ構造が特徴の現在の計画を大幅に変更することはできないと説明した。

 野党からは、総工費1625億円を示した昨年5月の基本設計段階から約900億円も膨らんだことについて、文科相の責任を問う声も出た。文科相はゼネコンとの工事費の積算作業が始まったのは昨年12月だと明らかにし「私が大幅に工事費がアップする可能性について報告を受けたのは今年4月」と弁明した。

 しかし、総工費が2000億円以上に膨らむとの建築家の指摘が昨年から再三あっただけに、危機感が薄く、対応が遅れたとの印象はぬぐえない。野党から「(見直すべきだとの)まともな意見に耳を傾けなかった」「(問題を)放置した」と非難されるのも無理はなかった。

 涙の訴え

 新国立競技場計画は、JSCが7日に開いた有識者会議で了承され、実質的なゴーサインが出た。安倍晋三首相(60)も10日の衆院特別委員会で、デザイン変更は困難との認識を示した。しかし、批判は収まらず、沈黙気味だったスポーツ界からも反対意見が沸き上がる。

 元陸上五輪選手の為末大(ためすえ・だい)氏(37)は自身のブログで「どう考えても経済的に負担が大き過ぎる競技場をつくることは今の日本の状況から見ても反対」と表明。大会自体のイメージ低下を懸念する声もあり、女子マラソンの五輪メダリスト、有森裕子(ゆうこ)さん(48)は6日に東京都内で行われた計画反対派のシンポジウムで「五輪が負の要素のきっかけに思われるようなことは、一人のアスリートとして本望ではない」と涙ながらに訴えた。

 安保より関心

 政界では、与党からも「国民に説明がつかない」(二階(にかい)俊博自民党総務会長)「ずさんだ」(石井啓一公明党政調会長)などの声が高まる。ある自民党幹部は「安全保障関連法案より有権者の関心が高く『どうなっているんだ』とおしかりを受けた」と打ち明けた。

 首相官邸も世論の反応に神経をとがらせる。14日に開催予定だった東京五輪・パラリンピック大会推進本部の初会合は、直前になって見送りが決まった。安保法案の採決を間近に控え、新国立問題で政権への打撃が重なるような事態は避けたいとの思惑がにじむ。政府関係者は「いまさら、引くに引けない。批判は今がピークだ」と自らに言い聞かせた。(SANKEI EXPRESS

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