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大人も子供も一体感が増す特別な時間に 松たか子、近藤良平 舞台「かがみのかなたはたなかのなかに」

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大人も子供も一体感が増す特別な時間に 松たか子、近藤良平 舞台「かがみのかなたはたなかのなかに」

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近藤良平さん(右)が率いるコンドルズの舞台は女人禁制。松たか子さんは「稽古着の学ランを着せてもらって気分を味わった」と笑う=2015年6月19日、東京都渋谷区(宮川浩和撮影)  鏡の向こうにはどんな世界があるのだろう。興味はあるけれどちょっと怖い-。そんな子供の頃の好奇心を思い出させる舞台「かがみのかなたはたなかのなかに」に女優、松たか子(38)とダンサーの近藤良平(46)が出演中だ。観客席には親子専用エリアを設置。長女出産後、初の舞台となる松は、大人も子供も「一体感が増す特別な時間になれば」と、母としての素顔ものぞかせる。

 父の姿を鏡ごしに見る

 「かがみの」は原作と演出、出演も兼ねる長塚圭史(40)とバレエダンサーの首藤康之(43)、人気ダンスカンパニー「コンドルズ」を主宰する近藤と松の4人による舞台。海軍将校タナカ(首藤)と鏡の向こうにいるカナタ(近藤)が、鏡の向こうにいるケイコ(松)をともに好きになる。恋のさや当てに、ケイコの鏡合わせの人物コイケ(長塚)が絡み、物語は思わぬ方向へ。

 鏡について松が思い出すのは子供のころ、父の松本幸四郎(72)が歌舞伎の舞台の本番前、楽屋の鏡に向かって化粧をする姿を背中ごしに見ていた記憶。「直接ではなく、鏡に映る父を見ることが普通の家庭より多かったと思います」

 近藤は子供のころに読んだ漫画「ドラえもん」で鏡が題材だった物語を思い出す。「過去の自分が鏡の向こうにいる未来の自分に、これからどう生きるか相談したくなった。今回は実際に会えるようで面白い」

 4人が集まるのは2012年12月から翌年1月に上演した長塚作「音のいない世界で」に次いで2作目。新国立劇場の親子向けシリーズの一環で、前作は「音泥棒」がテーマ。「大人の童話」の風情もあった。

 「ぜひ次回作を」という4人の思いが実を結んだ今回は、ブラックユーモアとファンタジーがないまぜになったような内容だ。鏡の向こうに広がる神秘に着目した長塚が、戦いや愛とを絡ませた。物事を大人と違う角度で眺める力を持つ子供に、世界は陽気なだけではないことを感じてもらう。大人には、子供の頃に感じたはずの好奇心や想像力を、思い出してほしいという願いも込められる。

 プラモ作りと一緒

 一方で前作より子供が興味を持てるような工夫を意識。鏡をはさみタナカとカナタ、コイケとケイコがペアで織りなす動作の妙はその入り口になる。振り付けする近藤は「話の意味と鏡の反応の面白さ、大人と子供にどう感じてもらうかのさじ加減は難しい。複雑なプラモデルを作るのと一緒」と話す。

 プロのダンサーである近藤と首藤に比べ、長塚と松は動きを追うのに苦労。松は稽古が夕方になると「限界が来ちゃう」と苦笑い。「見ながら『これいいことなの? 悪いことなの?』ってグルグル考えるのかな」と、子供たちの反応を楽しみに稽古を重ねる。「泣き出しちゃう子がいたとしても、お客さんたちが『頑張って見続けて』と念じて見守るような空間になれば。思い通りの環境で観劇できないことが思わぬ楽しいひとときになってほしい」

 3月に長女を出産したばかりの松は、育児も忙しいはずだが「この機会は今しかない。大変なことも含めて、思い切りその時間を過ごしたい」と全力投球。(文:藤沢志穂子/撮影:宮川浩和/SANKEI EXPRESS

 【ガイド】

 7月26日まで東京・新国立劇場小劇場。問い合わせは新国立劇場ボックスオフィス(電)03・5352・9999。

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