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「寝耳に水」デザイン変更浮上 新国立、批判受け方針転換 「五輪間に合う?」

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「寝耳に水」デザイン変更浮上 新国立、批判受け方針転換 「五輪間に合う?」

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新国立競技場のイメージ。莫大な建設費用への批判を受け、計画が見直されることになった(日本スポーツ振興センター提供)  総工費が2520億円にも膨らみ、強い批判を浴びている2020年東京五輪・パラリンピックのメーンスタジアムとなる新国立競技場の建設計画が見直される方向となった。2本の巨大な鉄骨製の「キールアーチ」を採用したデザインの変更のほか、最大収容数を現行の8万人から6万人程度に縮小する案が政府内で浮上している。政府関係者が15日明らかにした。急転直下の方針転換は、事業主体である日本スポーツ振興センター(JSC)のほか、文部科学省や東京都にも“寝耳に水”の事態。「五輪に間に合うのか」との不安の声も広がっており、新国立の迷走はなお続きそうだ。

 総工費圧縮で聴取

 世論の批判が日増しに高まるなか、自民党の谷垣禎一(さだかず)幹事長ら党幹部は15日、丹羽(にわ)秀樹文部科学副大臣らを国会内に呼び、総工費を圧縮できないかどうかについて聴取した。同席した二階(にかい)俊博総務会長はBS日テレ番組の収録で「節約する方法はないのか。予算を縮小することになれば若干の見直しは当然だ」と述べた。

 公明党の石井啓一政調会長も15日の記者会見で「国民に事情が知らされないまま工事費が膨れ上がってしまったのが最大の問題だ」と指摘した。

 こうした事態を受け、政府はデザイン変更などによる工費の圧縮のほか、2019年5月の完成を目指す工期の延長の両案を軸に検討を始めた。

 発表期限は31日

 工費が膨らんだ最大の元凶は、新国立のシンボルとなるキールアーチ。長さ400メートルの巨大な構造で工法も特殊だ。アーチを含む屋根部分の工費は950億円に上る。しかも五輪後に設置を先送りした開閉式の屋根の工費は含まれていない。

 工費の圧縮にはデザインの変更が不可避だが、この段階で大幅に見直せば、こけら落としで使用する予定だった19年のラグビー・ワールドカップ日本大会どころか、五輪自体に間に合わない恐れがある。安倍晋三首相も10日の国会答弁で「(デザインを変更すれば)五輪に間に合わない可能性が高い」と指摘していた。

 政府は31日からクアラルンプールで開かれる国際オリンピック委員会(IOC)総会で、建設計画を報告する予定だ。事業主体のJSCは月内にもアーチ用の資材を発注するという。このため、政府は計画を見直す場合、31日までに変更方針を発表し、新たなデザインの選定作業などに着手する。安倍首相が近く下村(しもむら)文科相らと協議し、最終判断する。

 「間に合うか心配」

 これに対し、文科省のある幹部は「今からの計画見直しは、不可能に限りなく近い」と、困惑を隠せない。文科省によると基本設計を見直した場合、設計と建築確認に最短でも19カ月を要するという。建設工事は42カ月必要で、「完成まで61カ月かかり、竣工は20年7月になる」という。

 500億円の費用負担を求められている東京都の幹部は「都が建設する施設でさえ、なんとか五輪までに完成させようと努力している。あれだけ巨大な施設を今から見直して、本当に間に合うのか。心配で仕方ない」と不安を漏らした。(SANKEI EXPRESS

 ■新国立競技場 陸上など大規模な国際大会を開く基準を満たさなくなっていた国立競技場(東京都新宿区)の跡地に新設する。国際公募でイラク出身の女性建築家、ザハ・ハディド氏のデザインが採用された。開閉式の屋根を設置する計画だったが、文部科学省は5月、工期短縮を理由に2020年東京五輪後への先延ばしを発表した。下村博文文科相は東京都の舛添要一知事に対し、総工費のうち約500億円を都が負担するよう要請。負担の在り方をめぐり国と都が協議している。

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