ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
トレンド
【RE-DESIGN ニッポン】時代に合わせ 「IGUSA」世界へ
更新
青々と茂るいぐさ。刈り取り期には支柱が見えなくなるほど草丈が伸びる=2015年6月11日、福岡県大川市(北林功さん提供) 日本人の伝統的な生活空間に欠かせないものの一つとして、畳が挙げられる。滑らかで柔らかな畳の表面に用いられているのが、いぐさで織られた「畳表」である。日本特有の床材をきれいに仕上げるために欠かせないいぐさだが、今や多くは中国産が用いられている。そんな中、日本産のいぐさだけを使って現代の生活空間に合う商品を企画・販売しているのが、福岡県大川市の添島勲商店である。「RE-DESIGNニッポン」の第15回は、このいぐさの新たな可能性への取り組みを紹介する。
百人一首の読み札に描かれた貴族や僧侶は、畳に座している。畳は平安時代ごろから規格化が進んだといわれるほど、長い歴史を持つ。
畳作りの重要な材料がいぐさだということは、すでに述べた。このいぐさを、そのまま織った敷物が「ござ」、染色して織り上げてカラフルな模様を表現したものは「花ござ」と呼ばれる。日本特有の畳だから、いぐさも国産品が多いかといえば、そうではない。8割以上が中国で生産されているのだ。
「日本のいぐさは12月に植え、7月頃刈り取るが、中国では5月か6月くらいに刈り取るため、芯が詰まっておらず、表皮も弱い。そのためすぐに傷んでしまう」と、今回訪ねた添島勲商店の添島彰さんは話す。痛みやすいというイメージにより、いぐさ製品全体が敬遠されることを添島さんは懸念する。
また、柔らかく、肌に触れて心地よい触感がいぐさ製品の特徴なのだが、中国産は使用されている農薬の種類や量など、不透明な点が多く、健康面で心配する声もあるという。さらに、日本人の生活様式の変化により、和室が減少。畳など従来のいぐさ製品の需要減に拍車をかけている。
いぐさの特徴は柔らかさ、夏には涼しさを、冬には暖かさを感じさせる、よい香りなど、まさに“五感”に訴求する点だ。ほかにも、室内のNOx(窒素酸化物)などを吸着して分解させたり、室内の湿度を適切に保ったりする機能性も持ち合わせているという。
こうしたいぐさの特徴を生かすため、添島勲商店は国産いぐさにこだわり、周辺のいぐさ農家や工房と協力して製品作りに取り組んでいる。
いぐさ製品の工程は、織物とほぼ同じである。周辺の農家で生産されたいぐさは、必要に応じて染色され、西陣織や博多織などと同じくジャカード織機で織りあげられる。文字通り「いぐさ織」だ。これが畳表やござに使われる。
今までの使い方から、時代に合った製品の展開へ-。添島勲商店では、いぐさ製品を用いてファブリックボードや椅子、スツール、収納ボックスなど、「いぐさインテリア」を手掛けている。いぐさが持つ“五感”に訴える特徴を生かした商品展開だ。「いぐさの良さを世界の人に伝えたい。そしていぐさが『IGUSA』として世界の人に認知してもらいたい」と語る添島さん。今年、新たにフランス人デザイナーとタッグを組んでヨーロッパ向けの製品開発を開始している。長い歳月をかけていぐさ文化を育んだ先人たちの思いを胸に、日本の「IGUSA」製品がヨーロッパの家庭で当たり前の風景になる日を目指して、添島さんらの挑戦はさらに続く。(「COS KYOTO」代表 北林功/SANKEI EXPRESS)