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三宅一生のものづくり その神髄に触れる ISSEY MIYAKE MARUNOUCHI
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「132_5.ISSEY_MIYAKE」のドレスと靴。ドレスは放射線状に広がる優雅なフォルムが特徴、DIAGONAL_FOIL(7万2000円)靴(4万6000円)は黒・ベージュの2色展開=2015年6月5日、東京都千代田区(荻窪佳撮影)
デザイナー三宅一生が率いるISSEY MIYAKE INC.が東京・丸の内に複合店を出した。JR東京駅前で、行幸通りと丸の内仲通りが交差する「日本の表玄関」ともいえる場所。メンズ、ウィメンズの服にバッグ、照明器具に時計や香水まで、三宅一生(77)の「ものづくり」の神髄がわかるアイテムを厳選して紹介。国内外に向けた発信を積極的に進めていく。
4月にオープンした「ISSEY MIYAKE MARUNOUCHI」はJR東京駅前、郵船ビル1階の一画にある。空間デザインは吉岡徳仁が手がけ、内装は赤いトライアングルをモチーフに、歴史と未来のコントラストを表現している。連日、午前11時の開店前から長蛇の列ができ、地方から訪れる観光客や外国人も多い。近隣に本社を構える大企業のビジネスパーソンなどもよく足を運んでいるという。
三宅が1971年に最初のコレクションを発表してから40年以上がたち、一貫して「一枚の布」が生み出すみずみずしさと機能性を追い求めてきた。この店は、三宅による普遍的なデザインのプロダクトブランドに特化し、その神髄が浮かび上がる内容となっている。
メンズの「HOMME PLISSE ISSEY MIYAKE」は2013年に発表。ポリエステル素材を服の形に裁断、縫製した後にプリーツ加工する「PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE」の「製品プリーツ」手法をルーツに誕生した。さらなる研究開発の末、この春テーラードのジャケットも販売がスタートした。自宅で洗濯しても型崩れせず、出張などの持ち運びに便利と機能性も十分。オンとオフともに活用でき、近隣のビジネスマンに人気という。
ウィメンズの「132 5. ISSEY MIYAKE」はコンピューター・サイエンティストと共同開発した、折り畳みの妙から生まれる服だ。再生ポリエステル素材を改良した生地からできる「折り」は鋭角か三角形。切り込みの違いからワンピースやシャツなどのバリエーションが生まれ、畳んだ状態から立体的に立ち上がる様子は魔法を見ているようだ。
ブランド名の「1」は一枚の布、「3」は三次元の立体造形、「2」は折りたたんで平面にする意味、「5」は人々が着て時間的な広がりが生まれ、服そのものが進化することを表現している。
谷崎潤一郎が「陰翳礼賛」に記した陰翳の濃淡のあやがもたらす繊細なあかりのニュアンスにヒントを得てつくられた「陰翳 IN-EI ISSEY MIYAKE」はイタリアのアルテミデ社が製品化した照明器具。「132 5.」を開発する過程で、衣服に限定することなく幅広いデザインの可能性を探る試みが実を結んだ。ベースには「影」に対する日本の伝統的な美意識がある。
そして2000年の登場以来、爆発的な人気を呼ぶバッグ「BAO BAO ISSEY MIYAKE」は、ミラー素材を使った「PLATINUM」や、他店の取り扱いが少ないデイパックなどのスポーツラインが並ぶ。シンプルな三角形のピースが集まり、軽くて柔らかく、自由自在な形を作るバッグの魅力は奥深く、新作発売日にはファンが押しかけるほどだ。
三宅はかねて「伝統と現代、東洋と西洋が出会える場所を造りたい」「未来のあり方を共に考え、いま生きる時代を創造したい」と話していた。デザイナーとして世界に躍り出て、いまも世界的な人気を誇る三宅の世界をかいま見るためにも訪れてみたい。(文:藤沢志穂子/撮影:荻窪佳/SANKEI EXPRESS)