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「暴言王」トランプ氏は共和党を壊す
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来年11月の米大統領選挙の候補者指名争いが早くも熱気を帯びている。ただし、候補者間の論戦が本格化しているからではなく、共和党から出馬表明した不動産王、ドナルド・トランプ氏(69)の発言が物議を醸し、話題をほとんど独り占めしているためだ。
「われわれが泡沫(ほうまつ)候補に関心を払うことはめったにない。しかし、トランプ氏ほどの不愉快な人物となれば例外だ」
7月20日付の米紙ワシントン・ポスト社説(電子版)は、紙面で取り上げたくもないであろうトランプ氏について報じる理由をこう説明した。
トランプ氏は、移民問題に絡みメキシコ人を「強姦犯」と呼び、同じ共和党の候補者の携帯番号を読み上げるなどの暴言を繰り返している。
最近ではベトナム戦争で捕虜になり激しい拷問を受けた共和党のジョン・マケイン上院議員(78)について、「捕まったから英雄になった」と侮辱した。退役軍人を含む多くの有権者が強く反発したものの、一部の世論調査での支持率は10人以上の共和党候補でトップに躍り出ている。
ワシントン・ポストはトランプ氏を「兵役を逃れるために徴兵猶予を繰り返し、マンハッタンで遊び回っていた。真の英雄的行為を正当に理解できないのも当然だ」と酷評。その上で他の大統領候補たちに対し、「勇気という概念を持たない人々が指導者である国には誰も暮らしたくない」ということを肝に銘じるべきだと強調した。
保守系の米紙ウォールストリート・ジャーナル(アジア版)は7月21日付の社説で「トランプ氏を擁護する右派の政治家やメディアは、いつまで彼がまともな候補者であると装い続けるのだろうか」と疑問を呈した。
トランプ氏が世論調査で高い支持率を得ていることについて、社説は「政治的右派で台頭している問題を露呈するものだ」と説明。また、「あまりにも多くの保守主義者たちがトランプ氏の商業主義的姿勢を大目にみている。彼の発言は有権者の深い不安や怒りを代弁しているから尊重されるべきだと触れ込んでいる」と糾弾する。
社説は批判の矛先を保守系メディアにも向け、「多くの右派は、どれほど現実離れしていようが、大半の米国人を侮辱するものであろうがおかまいなく、大衆迎合的な感情を爆発させることに興じているようにみえる。仮にトランプ氏が保守主義者たちの代弁者と化した場合、保守主義は氏とともに崩壊するだろう」と警鐘を鳴らす。
米政治専門紙ポリティコは22日の記事で「トランプ氏は候補者指名争いであろうが本選であろうが勝つことはない」と断言した上で、トランプ氏が負けた場合、支持者が経験することになる状況を「疱疹(ほうしん)と二日酔い」というたとえで予測する。
勝敗が決まるまでは楽しくて飲み過ぎるが、敗北が決まった翌日は二日酔いになる。さらに民主党のヒラリー・クリントン前国務長官(67)に敗北する事態になれば、疱疹のように長い間苦しむことになる、というものだ。
共和党候補者の一人、リック・ペリー前テキサス州知事(65)は、トランプ氏のことを「保守主義のがん」と呼び、トランプ氏が「共和党の終焉(しゅうえん)をもたらすかもしれない」とまで断言する。共和党候補者にとっても、トランプ氏の存在が共和党全体の足を引っ張っているとの認識が強まっていることを裏付けている。
当のトランプ氏はといえば、数々の暴言の反省はなく、むしろ発言のボルテージを上げている。共和党全国委員会などから、発言を自重するよう求められているようだが、本人はこれを「共和党側に冷たくされている」と感じているようだ。
トランプ氏は7月23日付のワシントンDCの議会専門紙ザ・ヒルのインタビューで、共和党の指名候補にならなければ第三政党からの出馬も辞さない姿勢を示唆した。
「共和党がどう対応するか次第だ。党が公平でなければ、それは(第三政党からの出馬の)要素になる」と答えている。トランプ氏なりの共和党へのアピールなのかもしれないが、むしろ喜んで受け入れられるかもしれない。(国際アナリスト EX/SANKEI EXPRESS)