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政治
米違反で対抗措置 農産品関税上げ TPP交渉 国産牛肉は「撤廃」で調整
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閣僚会合を終え、厳しい表情で報道陣の質問に答える甘利明(あまり・あきら)TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)相=2015年7月29日、米ハワイ州ラハイナ(共同) 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉の日米2国間協議で、自動車分野の合意に米国が違反した場合、日本は対抗措置として、TPPで引き下げた農産品の関税を再び引き上げる、と要求していることが29日(日本時間30日)分かった。同措置は「スナップバック」と呼ばれる紛争解決手続きで、日米協議の残された懸案の一つとなっている。両国は31日に予定される閣僚会合閉幕までの決着を目指す。
スナップバックは通商協定で相手国が合意通りに関税を下げなかったり、安全基準に関するルールを守らなかったりした場合などに、履行を促すため自国の関税を引き上げる仕組み。
米国は日本が自動車分野で新たな非関税障壁を設けた場合、米国がかける自動車の関税撤廃を延期する措置を提案している。すでに関税がゼロの場合は、税率を引き上げる。米国は関税撤廃による輸入急増を防ぐ手段としてスナップバックを重視しており、韓国との自由貿易協定(FTA)では導入済みだ。
韓国は輸入車に関税を課しており、米国と同様の対抗措置がとれる。だが、日本は輸入車に関税をかけておらず、このまま導入した場合、米国だけが利用できる不公平な措置となる恐れがある。このため日本も重要分野の農産品で対抗措置をとるべきだと判断した。
自動車分野で日米は、TPP域内品として認定する際のルールを定める「原産地規則」でも折り合いがついていない。米国は域内品を認定する場合、参加国内からの部材調達比率が55%以上と高い基準を求める。だが、タイなど参加国外からの輸入も多い日本は40%以上を主張している。
域内品として認定された場合、TPP参加国内で関税減免の対象となる。カナダやマレーシア、メキシコは米国に同調しているもようだ。一方、日本が求めた米国の自動車部品関税の撤廃については、大半の品目で即時を含む10年以内に実施する方向だ。日米閣僚協議を受け、事務レベル協議を続けている。
TPP交渉の日米2国間協議で、日本から米国に輸出する牛肉の関税を撤廃することで調整していることが29日、分かった。
米国側が設けている低関税輸入枠を協定発効時に現在の15倍の3000トンに拡大した上で、10年以上かけて最終的に関税をなくす。農産品で守勢に回ることの多い日本には輸出拡大で攻勢をかける象徴的な品目となりそうだ。
甘利明(あまり・あきら)TPP担当相は閣僚会合前の記者会見で、米国への牛肉輸出に関して「大事なことは最終的に関税がなくなること。かなりわれわれの要望が実現しつつある」と述べ、関税撤廃に期待を示した。
米国は現在、日本産牛肉の輸入に対し、1キロ当たり4.4セント(約5円)の関税をかけ、200トンを超えると大幅に引き上げている。近年の和牛ブームで日本が2014年に米国に輸出した牛肉は153トンと急速に伸びている。今後も増加が見込まれるため、大幅な枠拡大を米側に求めてきた。合意すれば、政府が目指す農産物輸出の大幅増加が期待される。(米ハワイ州ラハイナ 本田誠/SANKEI EXPRESS)
≪閣僚会合 マレーシア・メキシコが壁≫
TPP交渉の閣僚会合の雲行きが怪しくなっている。今回で「最後の閣僚会合」(甘利明(あまり・あきら)TPP担当相)にするはずだったが、最も難航する知的財産は対立解消のめどが立っていない。交渉の新たなブレーキとしてマレーシアやメキシコも浮上した。会合は残り2日だが、その帰趨(きすう)はみえない。
29日の会合終了後、今回の会合で大筋合意に達するか、と記者団に問われた甘利氏は「あと2日間で間に合うかどうか、まだなんともいえない」と述べ、表情を曇らせた。
甘利氏は、会合前に比べて「厳しい感じを新たにした点もある」と説明。その上で、知的財産のうち新薬データの保護期間に関し、参加国間の主張に「まだかなり大きな隔たりがある」と打ち明けた。
新薬データの保護期間をめぐっては、有力な新薬メーカーを多数抱える米国が保護期間を12年にするよう求めてきた。一方、安価な後発薬の普及が必要な新興国やオーストラリア、ニュージーランドは5年以下とするよう主張した。
その後、米国は主張をやや軟化させ、7~8年で決着するとの見方もある。それでも、オーストラリアは歩み寄りにまだ強い抵抗感を示しているもようだ。
渋谷和久内閣審議官は29日、TPP政府対策本部が現地で開いた業界団体向けの説明会で「(新薬問題で)方向性が出ないと、他の問題で(交渉の)カードが出ない」と強調した。
こうしたなか、“問題児”として浮上してきたのがマレーシアとメキシコだ。特にマレーシアは広範な交渉分野で、マレー系住民を厚遇する「ブミプトラ(土地の子)政策」に関連する部分を例外扱いとするよう主張し、交渉の重荷となっている。協定適用の例外を定める法的・制度的事項などでも例外扱いを求めている。
同様にメキシコは乳製品の市場開放に消極的な姿勢を強めており、ニュージーランドやオーストラリアがいらだちを募らせている。(米ハワイ州ラハイナ 本田誠/SANKEI EXPRESS)